少年の複数での民家に侵入しての強盗致傷の事案
<原決定>
・・・
少年を一定期間少年院に収容して矯正教育を施す必要⇒第1種少年院に送致するのが相当。
少年に強い自律性を身につけさせる必要がある⇒その処遇については、相応の時間をかけて行なうべきであり、短期の処遇勧告を付することは相当でない。
<判断>
原決定の収容処遇の判断を是認し、抗告を棄却。
but
収容期間については、その判断は合理性に欠けるとして、一般短期処遇が相当。
←
①少年の保護処分歴
②少年の非行性の程度
③少年緒反省、更生への意欲
④保護環境(両親との関係、両親の監護意欲)
<解説>
● 原決定: 少年に強い自律性を身につけさせる必要がある⇒その処遇については、相応の時間をかけて行なうべきであり、短期の処遇勧告を付することは相当でない。
vs.
長期処遇が相当であることの根拠としては若干抽象的で説得力に欠け、
鑑別結果の処遇意見と異なる処遇選択をする場合には、鑑別結果の根拠が不十分であることを相応に示す必要がある。
処遇選択に当たっては、少年の健全育成を図るため少年の可塑性を踏まえた将来予測を伴うものであり、収容処遇の場合には少年の自由を拘束する側面があることは否定できない
⇒実務上、謙抑的な運用が行なわれている。
社会内処遇か収容処遇かの選択・判断に当たっては、事案の重大性や態様の悪質性等の非行事実の評価、資質、能力、性格・行動傾向等少年の資質上の問題のほか、
保護処分歴の有無・内容、
少年の反省・更生の意欲、
保護環境、
社会的資源等の中に、少年の改善更生に結び付く要素がある場合には、直ちに収容処遇とはせずに、そうした要素を生かすことができないか
家裁調査官による試験観察を始め、関係諸機関による指導監督等に期待することが可能かを十分に考慮すべきである
という基本的な発想があるように思われる。
● 家庭裁判所が一般短期の処遇勧告を付さなかったことが「処分の著しい不当」(少年法32条)に当たるかについては争いがある。
A:肯定し、少年院の指定に準じるものとして抗告を認める
B:否定(多数説)
←
①短期処遇は運用上の処遇過程にすぎない
②矯正機関が処遇勧告に従うといっても、それは事実上のものにすぎず、分類権限は矯正機関にある
but
実務上は、少年院送致自体に対する不服申立てを解釈した上で、それを適法として扱い、審理の結果、短期処遇が相当との判断に達した場合には、抗告を棄却した上で、理由中で短期処遇が相当である旨の判断を示す。
● 抗告審が審査の結果、抗告に理由があると判断⇒決定をもって、原決定を取り消して、事件を原審裁判所に差し戻さなければならない。(少年法33条2項)
←
少年に対して最終的にいかなる処分をすべきかは、家庭裁判所がその専門的判断に基づいて決定すべき。
処遇勧告についても同様であり、実務上は、抗告審が直接収容先に処遇勧告をするのではなく、短期処遇が相当と判断した旨の少年院長宛ての通知書を発するとともに、その旨の通知を行なったことを原裁判所にも通知し、原裁判所はこれを受けて改めて処遇勧告を行なう例が多い。
判例時報2487
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