児童相談所長による親権停止の申立
東京高裁R1.6.28
<事案>
親権者D
抗告人A(平成20年生まれ)
親権者Cは、親権者Dと婚姻するとともに、抗告人Aと養子縁組の申し出。
親権者Dの実母は、親権者Dが抗告人Aらの養育ができていないと児相に相談⇒一時保護の措置、乳児院への入所措置、児童養護施設への入所措置。
平成29年8月、抗告人Aらにつき児童養護施設への入所措置が解除
but
その後、親権者らは虐待行為。
⇒
平成29年12月、一時保護の措置。
抗告人Bは、平成30年4月、原審に対し、親権者らの抗告人Aに対する親権を2年間停止することを求める審判の申立て。
抗告人Aは、利害関係人参加をした。
<規定>
民法 第八三四条の二(親権停止の審判)
父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権停止の審判をすることができる。
2家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、二年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める。
<原審>
抗告人Aにつき平成29年12月に一時保護の措置がとられるまでの親権者らの親権の行使は不適当であり、抗告人Aの利益を害するもの。
but
抗告人Aにつき一時保護の措置がとられている現時点においては「子の利益を害する」との要件(民法834条の2第1項)を満たすとはいえない。
⇒
抗告人Bの申立てをいずれも却下する。
<判断>
①親権者らが抗告人Aに対して重大な虐待行為を繰り返した
②親権者らに抗告人Aの養育実績はほとんどなく、親権者らが今後抗告人Aを適切に養育できると期待することはできない
③親権者らに対して強い恐怖心を抱いている抗告人Aの今後の健全な成長のためには、親権者らの影響が心理的にも及ばないと抗告人Aが明確に自覚し得るような環境が必須
④抗告人Aが親権者らの親権の停止を希望している
⑤抗告人Aと親権者らが親子として再統合を果たす可能性がきわめて小さい
⇒
親権者らによる親権の行使は不適当であり、そのことにより抗告人Aの利益を害することが明らか
⇒原審判を取り消して親権者らの抗告人Aに対する親権を2年停止。
<解説>
原審:抗告人Aにつき一時保護の措置が取られている現時点においては親権停止の要件がない
本決定も、親権を停止るためには現時点において民法834条の2第1項の要件を満たす必要があることを前提に
←
親権者らの今後の養育能力、抗告人Aにとっての親権停止の必要性、抗告人Aの意向及び抗告人Aと親権者らの再統合の可能性を考慮。
判例時補油2491
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