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2021年10月16日 (土)

覚せい剤使用につき、解離性同一性障害の影響による心神耗弱⇒再度の全部執行猶予の事例

大阪高裁H31.3.27

<事案>
覚せい剤事犯(自己使用と所持)のうちの使用について、解離性同一性障害の影響による心神耗弱⇒同種自判による執行猶予中(自己使用2回で、懲役2年、執行猶予4年)の犯行でありながら、再度の全部執行猶予を付した事案。

<一審>
被告人が解離性同一性障害に罹患していることは認めた。
but
①それが不完全型であって、別人格が出現しても元来の人格も併存
②動機が十分了解可能

完全責任能力を肯定。
懲役1年2月、その刑の一部である懲役4月の執行を2年間猶予。

<判断>
A医師の見解をより他覚的に検討し、
犯行の2か月前頃から、「おっちゃん」の人格が被告人に憑依し、覚醒剤を買えとか使えと指示し、また、「おっちゃん」に殴られたり蹴られたりという体感幻覚
もともとあった希死念慮も強くなり、
抵抗できなくなって覚醒剤使用に至ったという、A医師の見解を基本的に採用。

使用について心神耗弱を認めた。

<解説>
● 一審と控訴審の違い:
解離性同一性障害の症状が犯行時どの程度深刻であったかの認定の違いによる。
①被告人には以前から別人格が出現することがあったこと
②かつて交際相手から、覚醒剤の使用や暴力的性行為を強いられるなど相当辛い目に遭わされており、「おっちゃん」はその者の人格が影響したものと考えられる
③犯行当時は、「おっちゃん」に殴る蹴るなどされるという体感幻覚まであった
ことなど、
被告人や親族の供述とA医師の鑑定意見を基礎に認定

これが心神耗弱という判断に結びついた。

解離性同一性障害(多重人格)により、責任能力への影響が認められた例は極めて少ない
詐病と診断
鑑定が前提とした被告人の公判供述が信用できない⇒鑑定も信用できない
解離性同一性障害に罹患していると認められても、責任能力をどのように考えるか?
A:多重人格のうち、副人格の状態で行なった行為につき、行為時の人格を問題にし、完全な責任能力を問えるという立場(行為者人格アプローチ)
B:主人格と行為時の人格との関連を問題にするという立場(グローバルアプローチ)

本件:
憑依型という特殊性もあるが、元来の人格(主人格)と副人格が併存する中で、副人格の主人格への働きかけの内容、程度等を検討し、責任能力(行為制御能力)の著しく減退した状態であった疑いを排斥できないとしたもの。
また、弁護人の私的鑑定意見が判決に採用された例として参考に。

判例時報2488・2489

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