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2021年10月22日 (金)

登録意匠の要部の認定と、出願後の公知意匠の参照

大阪高裁R2.7.31

<事案>
トレーニング機器の意匠(「本件意匠」)に係る意匠権を有するXが、Yによるトレーニング機器の製造・販売は本件意匠権の侵害⇒Y商品の製造・販売の差止め等を求めた。

<争点>
Y商品に係る意匠(「Y意匠」)との類否。

<原審>
Y意匠は本件意匠に類似しない⇒Xの請求を棄却。

<経緯>
Y意匠については、 Yにより意匠登録。
Y意匠は本件意匠に類似するから意匠法3条1項3号により意匠登録を受けることができないとしてXにより無効審判請求⇒Y意匠は本件意匠に類似しないとして請求不成立審決がされ、審決取消訴訟を経て確定。
原審判決において、Y意匠が本件意匠に類似しないことを理由に、被告意匠の登録の有効が確定。
Y意匠は、本件意匠又はこれに類似する意匠利用するものではなく(意匠法26条1項)、被告商品は、登録されたY意匠そのものの実施であって、Yが業としてY商品を製造等することは、Yが専有する登録意匠の実施権(同法23条)の範囲内の行為。

<判断>
原審判決は相当。

<解説>
●意匠の類似判断の枠組
意匠権侵害訴訟における意匠の類似判断の枠組について「意匠を全体として観察することを要するが、この場合、意匠に係る物品の性質、用途、使用態様、さらに公知意匠にはない新規な創作部分の存否等を参酌して、需要者の最も注意をひきやすい部分を意匠の要部として把握し、登録意匠と相手方意匠が、意匠の要部において構成態様を共通にしているか否かを観察することが必要」(近時のほとんどの裁判例で採用されている)

公知意匠を参酌

意匠の新規性(意匠法3条1項)及び創作非容易性(同条2項)という創作性の登録要件を充足して登録された意匠の範囲については、その意匠の美感をもたらす意匠的形態の創作の実質的価値に相応するものとして考えなければならず、公知意匠を参酌して、登録意匠が備える創作性の幅を検討する必要がある

●要部を把握する意匠
ほとんどの裁判例は、被疑侵害意匠の要部のみを把握して両意匠の類否判断。

「登録意匠と被疑侵害意匠とが類似するか」という両意匠を等値した観点からではなく、
「被疑侵害意匠が登録意匠に類似するか」という観点、
すなわち登録された意匠の範囲内に被疑侵害意匠が含まれているかという観点からなされている。

●参酌する公知意匠について
前記枠組みにおいて参酌する公知意匠は登録意匠の出願前のもの。
but
本判決:登録意匠の要部を認定するに当たり、出願後の公知意匠を観察することによってもの、当該登録意匠に含まれる当該形態が、需要者の注意を引くかどうかを判断することができると考える

本件意匠に先行、後行する公知意匠を総合しても、本件意匠のパッド片の形状等がありふれたものであるとか、需要者の注意を引くものではない。

ヒット商品こそ往々にして模倣品が表れる⇒登録意匠を真似た後行意匠が多数出現したという出現後の事情を参酌することにより、その登録意匠のそれが出願された時点の要部が事後的に明確になることもあろう
登録意匠に先行、後行する意匠を参酌しても登録意匠に含まれる特定の形状等がありふれたものとはいえない⇒登録意匠に先行する意匠のみを参酌した場合は理論上なおさらその形状等はありふれたものとはいえない。

商標と同様、登録意匠と別の登録意匠が類似することは本来ないという考え方がある。

先行登録意匠Aと後行登録意匠Bについて、
Aを引用意匠とするBに係る意匠登録無効審判と
Bを被疑侵害意匠とするAに係る意匠権侵害訴訟
とで類否判断の結論が異なってはならない

前者でAの出願後かつBの出願前に公知となった意匠が参酌されるのであれば、その意匠はこの意匠権侵害訴訟においても参酌されることになる。
その場合、Aを真似た後行意匠を多数参酌することにより、Aのそれが出願された時点の要部が事後的にあり触れたものであるとされることがあり得る。

判例時報2490

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