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2021年10月20日 (水)

船主責任制限法が問題となった事案

広島高裁R2.2.21

<事案>
Xが所有し、Xと裸傭船契約を締結したAが運航させていた船舶が、山口県大畠瀬戸海域を航行中、・・・大島大橋の下を通過し・・・損傷を与えた。
⇒Xが、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律(「船主責任制限法」)の規定に基づき、責任制限手続開始の申立てをした。

<一審>
責任制限手続開始決定

傭船者らであるY1ないしY5は、即時抗告。

主張:
①本件事故による損害は、Xによる船主責任制限法3条3項所定の損害発生のおそれがあることを認識しながら自己の無謀な行為によって生じたもの⇒無謀な行為が存在しないことについてXが立証責任を負う。
②Y1(山口県)に生じた損害のうち橋梁復旧関連費用は、道路法58条1項所定の原因者負担金に該当する公法上の債権⇒船主責任制限法による責任制限の対象にならない⇒本件事故による制限債権の額が責任限度額を超えないことが明らかで、Xの申立てには船主責任制限法25条2号所定の棄却事由がある。

<判断>
船主責任制限法3条3項所定の責任制限阻却事由の存在の立証責任は債権者であるYらが負う。
Xに同項所定の無謀な行為があったとは認められない。
道路法58条1項に基づく公法上の債権にも船主責任制限法の適用がある。

<解説>
船主責任制限法:
海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約(「旧条約」)を国内法化したもの。
その後、1976年の海事債権についての責任の制限に関する条約(「新条約」)の批准及び旧条約の廃棄⇒新条約に 依拠して改正。

責任制限阻却事由:
旧条約⇒船舶所有者についてんは、故意又は過失がある場合、その者に責任制限を認めない。
立証責任は、法廷地法の定めに委ねられた。

責任限度額の引き上げを伴う責任制限制度合理化⇒責任制限阻却事由を限定する必要。
新条約⇒船舶所有者の責任制限阻却事由を故意または無謀な行為によって損失が生じた場合に限定。
その立証責任は債権者が負う。

責任制限の主体は、船主責任制限法2条1項2号、2号の2,3号所定の船舶所有者等及び救助者並びにその被用者等。

船舶所有者等又はその被用者等のうち1人が船主責任制限法で定めるところによりその責任を制限すると、これらの責任制限の主体たりうる者全員につき責任制限の効果が生じる(6条1項)。
これらの者の責任制限阻却事由は共通であるが、阻却事由の有無は、個々の主体ごとに判断され、被用者等に阻却事由があることは、その使用者である船舶所有者等の責任制限の可否に影響を及ぼさない。
法3条所定の責任制限阻却事由の立証責任は、改正前から債権者にあるとされていた。

責任を制限することができる債権:
船主責任制限法3条1項及び2項の各号に掲げられ、各号中に反対の趣旨の明示がない限り、責任制限の対象になる。

判例時報2490

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