« 少年の複数での民家に侵入しての強盗致傷の事案 | トップページ | 「黒い雨」訴訟1審判決 »

2021年10月 6日 (水)

那覇孔子廟訴訟上告審判決

最高裁R3.2.24

<事案>
那覇市の管理する都市公園内に儒教の祖である孔子などを祀った施設を設置することをZに許可した上で、その敷地の使用料の全額を免除した当時の市長の行為は、憲法の定める政教分離原則に違反し、無効⇒YがZに対して平成26年4月1日から同年7月24日までの間の公園使用料181万7063円を請求しないことが違法に財産の管理を怠るもの⇒市の住民であるXが、Yを相手に、地自法242条の2第1項3号に基づき前記怠る事実の違法確認を求めた住民訴訟。

<判断>
最高裁H22.1.20と同様の判断枠組みに依拠した上で、本件免除を違憲と判断。
地自法231条の3第1項、240条、地方自治法施行令171条の2から171条の7まで等の規定⇒客観的に存在する使用料に係る債権を理由もなく放置したり免除したりすることは許されず、YがZに対して本件使用料の全額を請求しないことは違法。
市長が市の管理する都市公園内の国公有地上に孔子等を祀った施設を所有する一般社団法人に対して前記施設の敷地の使用料の全額を免除した行為は、次の(1)~(5)など判示の事情の下では、前記施設の観光資源等としての意義や歴史的価値を考慮しても、一般人の目から見て、市が前記法人の前記施設における活動に係る特定の宗教に対して特別の便益を提供し、これを援助していると評価されたもやむを得ない⇒憲法20条3項に違反する。
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)

<規定>
憲法 第20条〔信教の自由、国の宗教活動の禁止〕
信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
②何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない

憲法 第89条〔公の財産の支出利用の制限〕
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

<解説>
判例:
政教分離原則の基礎となり、その解釈の指導原理となる政教分離原則は、国家が宗教的に中立であることを要求するものではあるが、国家が宗教との関わり合い持つことをを全く許されないとするものではなく、
宗教との関わり合いをもたらす行為の目的及び効果に鑑み、
その関わり合いが社会的、文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものと認められる場合にこれを許さないとするもの。

目的効果基準。

ある行為が憲法20条3項により禁止される「宗教的活動」に該当するか否かを検討するに当たっては、当該行為の主催者が宗教家であるかどうか、その順序作法(式次第)が宗教の定める方式にのっとったものであるかどうかなど、当該行為の外形的側面のみにとらわれることなく、当該行為の行なわれる場所、当該行為に対する一般人の宗教的評価、当該行為者が当該行為を行なうについての意図、目的及び宗教的意識の有無、程度、当該行為の一般人に与える効果、影響等、諸般の事情を考慮し、社会通念に従って、客観的に判断しなければならないとされ、
憲法89条により禁止される「公金その他の公の財産・・・を支出し、又はその利用に供し」(「公金支出行為等」)に該当するか否かについても、
前記の政教分離原則の意義に照らして、当該公金支出行為等による国家と宗教との関わり合いが前記の相当とされる限度を超えるものをいうものと解すべきであり、これに該当するかどうかを検討するに当たっては、憲法20条3項と同様の基準によって判断しなければならないとされていた。

判例時報2488・2489

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

|

« 少年の複数での民家に侵入しての強盗致傷の事案 | トップページ | 「黒い雨」訴訟1審判決 »

判例」カテゴリの記事

行政」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 少年の複数での民家に侵入しての強盗致傷の事案 | トップページ | 「黒い雨」訴訟1審判決 »