看護師の過失(生体情報モニタのアラーム設定の確認不十分)が肯定された事案
東京地裁R2.6.4
<主張>
亡Aの相続人であるX1及びX2が、亡Aがいわゆる植物状態となり死亡するに至ったのは、本件病院の医療従事者(医師又は看護師)に
①生体情報モニタのアラーム設定を誤り、これを見落とした過失
②鎮静剤を不適切かつ過剰に投与した過失
生体情報モニタ及び管理システムの製造・販売したY2及びY3に、
③製造物責任法における試用設計上の欠陥ないし不法行為における過失、
④製造物責任法における指示・警告上の欠陥ないし不法行為における過失
があった
⇒
Y1に対しては債務不履行又は不法行為に基づき、
Y2及びY3に対しては製造物責任又は不法行為に基づき
損害賠償を求めた。
<判断>
●生体情報のモニタのアラーム設定を誤り、これを見落とした過失(前記①)
①亡Aの病態自体、再出血をきたすなどして容体が急変する危険性があった
②投与されていた鎮静剤の副作用として呼吸抑制などが挙げられている
⇒
本件病院の医療従事者には亡Aの血圧同項のみならず、呼吸状態にも気を配り、それらの急激な悪化がみられたときには、それを察知できるよう監視をすべき義務があった。
バイタルサインの把握について、
看護師による見回りや目視による確認には限界⇒医療機器に頼らざるを得ない場合がある
but
その設定がきちんと維持されているかについては継続的に確認すべき注意義務。
①・・・その後の電子カルテ上の転床操作によって再度それらのアラーム設定がオフになったことを看過し、
②・・・亡Aの容体が急変するまでの約5日間にわたって誰もアラーム設定がオフになっていたことに気が付かなかった
⇒
本件病院の看護師には前記義務に違反した過失がある。
●鎮静剤を不適切かつ過剰に投与した過失(前記②)
・・・・
鎮静剤の投与方法には過失はない。
●管理システム及びセントラルモニタの機能が、製造物責任法における仕様設計上又は指示・警告上の欠陥ないしは不法行為における過失に当たるか(前記③④)
・・・そのような設計思想に不合理な点はなく、安全性を欠くと認めるべき点もない。
管理システム及びセントラルモニタの取扱説明書を併せて読めば、前記機能を読み取ることはさして難解ではない
⇒
仕様設計上及び指示・警告上の欠陥ないし不法行為上の過失いずれも認められない。
判例時報2486
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