人格権に基づくパブリシティ権の事案
東京高裁R2.7.10
<事案>
音楽事務所であるYとの間でマネージメント専属契約を締結した上で、本件専属契約に定められたグループ名で実演活動を行なっていたXらが、Yは、本件専属契約の終了後、本件グループ名を使用することを妨害する言動をしていると主張し、本件グループ名を使用する権利に基づき、Yに対して使用妨害行為の禁止を求めて仮処分命令を申し立てた。
<規定>
本専属契約:
「Yは、本件契約期間中、広告・宣言及び販売促進のため、Xらの芸名・・・その他の人格的利益を、Yの判断により自由に無償で利用開発することができる。」
「本契約期間内に制作された原盤及び原版等に係るXらの著作権上の一切の権利・・・ならびに、Xらに関する商標権、知的財産権、及び商品化権を含む一切の権利はすべてYに帰属する。」
<原審>
本件専属契約の条項について、本件グループ名の使用に関する権利の帰属に直接言及していないものの、一切の権利がYに帰属すると定めている⇒本件グループ名の使用権も同条項の対象となっている⇒Xらの申立てを却下。
<判断>
Xらは、本件グループ名の使用権を有する⇒使用妨害行為の禁止を認めた。
理由は以下のとおり。
①実演活動上のグループ名についても、人物の集合体の識別情報としてその構成員を容易に想定し得るような場合には、当該グループの構成員各人に人格権に基づくパブリシティ権が認められる。
②Xらは、各自が個別に実演活動をするだけでなく、グループとして共同して、実演活動を継続し、本件グループ名には一定の顧客吸引力が生じ、本件グループ名を通じてその構成員であるXら各自をも想起させ、識別させるものとなっている。
③本件専属契約において定められた条項には、芸名や本件グループ名等についての記載はなく、人格的権利についての制約はない
⇒本件専属契約が終了した時点では、Yにおいて本件グループ名を利用する権利はなく、Xらは本件グループ名を使用する人格的厭離を制約なく行使することができる。
④本件専属契約の終了にあたりYに損害が発生していたとしても、Xらが本件グループ名の使用を妨げることを正当化できない。
<解説>
パブリシティ権について、ピンク・レディー事件において、
肖像等は、商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり、このような顧客吸引力を排他的に利用する権利(以下「パブリシティ権」)は、肖像等それ自体の商業的価値に基づくもの⇒上記人格権に由来する一内容を構成する。
判例時報2486
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