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2021年9月10日 (金)

夫婦別姓と国賠請求

広島高裁R2.9.16

<事案>
控訴人は、夫と共に、夫婦それぞれの氏を称する旨を記載した婚姻届を提出したが、民法750条及び戸籍法74条1号(以下「本件各規定」)に違反することを理由に受理されなかった。

本件各規定は憲法14条1項、24条、人権B規約(自由権規約)、女子差別撤廃条約に違反しており、
これを改廃して夫婦別氏制という選択肢を新たに設けない立法不作為は国賠法の適用上違法の評価を受ける。
⇒被控訴人(国)に対し、慰謝料50万円の支払を求めた。

民法750条については、最高裁H27.12.16が憲法14条1項及び24条に違反しないとの判断。
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控訴人:平成27年最高裁判例において考慮されていない観点や同判決後の事情がある旨主張。

<規定>
民法 第750条(夫婦の氏)
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

戸籍法 第74条〔婚姻届〕
婚姻をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 夫婦が称する氏
二 その他法務省令で定める事項

憲法 第24条〔家族生活における個人の尊厳と両性の平等〕
婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
②配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。.

<主張>
控訴人は、平成27年最高裁判決に現れていない新たな観点として、
①本件各規定が憲法14条1に違反しないというためには、
夫婦同氏制を原則とすることに合理性が認められるだけでは足りず、、さらに進んで、夫婦同氏に例外を許容せず、夫婦同氏を一律に強制することの合理性が認められなければならない。
②本件各規定は、夫婦同氏を希望する考え方を有するか夫婦別氏を希望する考え方を有するかにより、法的な差別的取り扱いをするもの⇒憲法14条1項に違反

<判断>
●主張①について
憲法24条2項が婚姻及び家族に関する具体的な制度の構築を第一次的には国会の合理的な立法裁量に委ね、具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定が国会の多方面にわたる検討と判断に委ねられている

婚姻及び家族に関する法制度を定めた法律の規定が憲法24条に適合するといえるか否かは、当該法制度の趣旨や同制度を採用することにより生ずる影響につき検討し、当該規定が個人緒尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超えるものと見ざるを得ないような場合に当たるか否かという観点から判断すべき。
本件各規定が憲法24条や14条1項に違反するか否かについても、このような観点から判断すべき⇒控訴人の主張は採らない。

●主張②について
①夫婦同氏制が長く我が国の社会に定着してきたものであり、選択的夫婦別氏制度を導入するに当たっては、子の氏の問題等多方面にわたる慎重な検討が必要であって、夫婦同氏制を個々の当事者の多様な意思に沿って変容させることに対しては慎重に考える必要がある
②氏には家族という1つの集団を構成する一員であることを対外的に公示し、識別する機能を有しており、嫡出子であることを示すために子が両親双方と同氏である仕組を確保することにも一定の意義がある
③本件各規定の定める夫婦同氏制それ事態には男女間の形式的な不平等が存在せず、夫婦がいずれの氏を称するかは、夫婦となろうとする者の間の教義による自由な選択に委ねられている

本件各規定が、婚姻を事実上不当に制約するものであるとまではいえず、個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠く制度であると認めることはできない。

憲法24条に違反するとはいえない。
夫婦別氏を希望する夫婦が法律婚をすることができない結果として、夫婦同氏を選択肢法律婚をした夫婦と比較して様々な利益を教授できないとしても、憲法14条1項に違反するものということもできあに。

●女子差別撤廃委員会が我が国に対し本件各規定の改廃を行うよう度々勧告していることは重く受け止めるべきであり、憲法24条2甲によって婚姻及び家族に関する法制度の構築を国民から委ねられている国会には、選択的夫婦別氏制の導入等について真摯な議論を行うことが期待されている。

判例時報2486

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