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2021年9月 2日 (木)

石綿粉じんばく露による死亡と雇用主のビルメンテナンス会社の責任(肯定)

福岡地裁R2.9.16

<事案>
Aは・・・北九州市立総合体育館の設備の管理業務に従事⇒平成17年に肺がんにり患して肺の一部を切除し、平成25年に細菌性肺炎を原因とするARDSにより死亡。

Aの相続人であるXらが、Aは本件体育館の石綿含有建材から発生した石綿粉じんにばく露し、じん肺(石綿肺)及び肺がんにり患したことにyり死亡

Y1(北九州市)に対しては国賠法1条1項又は2条1項に基づき
Y2(会社)に対しては民法415条又は709条に基づき
損害賠償を請求。

<主張>
石綿粉じんばく露とAの死亡との間の因果関係を争うほか、
Y1:本件体育館に営造物の設置又は管理の瑕疵がない
Y2: 安全配慮義務違反がない

<判断>
●本件体育館の設置又は管理に係る瑕疵
国賠法2条1項における営造物の設置又は管理の瑕疵:
民法717条1項の土地工作物責任に係る最高裁H25.7.12を引用し、
吹付石綿を含む石綿の粉じんにばく露することによる健康被害の危険性に関する科学的な知見及び一般人の認識並びに様々な場面に応じた法令上の規制の在り方を含む行政的な対応等は時と共に変化⇒Y1が本件体育館の所有者又は管理者として国賠法2条1項に基づく営造物責任を負うか否かは、人がその中で勤務する本件体育館のような建築物の壁面に石綿含有吹付け材が露出していることをもって、当該建築物が通常有すべき安全性を欠くと評価されるようになった時点からであると解するのが相当。
①新聞報道
②石綿の除去工事
③文部省が発出した通知
④建設省の通知
⑤建設省による
⑥環境庁・厚生省が
⑦Y1が
⑧北九州市アスベスト対策連絡会議

遅くともAが本件体育館における勤務を開始した平成2年5月頃までには、建築物の石綿含有吹付け材(石綿含有率5%以上の吹付けロックウールを含む。)のばく露による健康被害の危険性及びそのような石綿の除去等の対策の必要性が広く世間一般に認識されるようになり、同時点で、本件体育館は通常有すべき安全性を欠くと評価されるようになった。

Y1の国賠法2条1項に基づく責任を認めた。

●Y2の安全配慮義務違反の有無
安全配慮義務(民法709条)に係る予見可能性について、
使用者が認識すべき予見義務の内容は、
生命、健康という被害法益の重大性⇒安全性に疑念を抱かせる程度の抽象的な危惧であれば足り、必ずしも生命・健康に対する障害の性質、程度や発症頻度まで具体的に認識する必要はない。
少なくとも同月(平成2年5月)頃までには、上記吹付けロックウールが使用されている建築物の保守・管理等を依頼されている建築物の保守・管理等を依頼されたビルメンテナンス業者は、石綿粉じんにばく露することにより、そこで作業に従事する従業員の安全性に疑念を抱かせる程度の危険性を認識することは十分可能であった。

Y2の安全配慮義務違反の前提となる予見可能性を肯定し、Y2の安全配慮義務違反を肯定。

<解説>
国賠法2条にいう設置・保存の瑕疵とは、民法717条に定める設置・保存の瑕疵と同義とされている。
最高裁H25.7.12の差戻審である大阪高裁H26.2.27では、遅くとも昭和63年2月の時点では、吹付け石綿が施された建物について、通常有すべき安全性を欠くと評価されるようになった旨判示。

判例時報2485

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