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2021年9月24日 (金)

公認会計士協会による決定の開示の差止請求の事例

最高裁R2.11.27

<事案>
公認会計士であるXらは、新たにン当時上場会社であったZと監査契約を締結⇒Y(日本公認会計士協会)の設置する品質管理委員会(「本件委員会」)に対して上場会社監査事務所名簿への登録を申請⇒本件委員会は、Xらに対して品質管理レビューを実施し、XらがZについて実施した監査につき、
「・・・財務諸表を作成することの適切性に関する監査証拠が十分に入手されていない」との限定事項を付した結論を表明した上で、前記限定時効はXらの表明した監査意見妥当性 に重大な疑念の商事させる⇒前記登録を認めない旨の決定(「本件決定」)

X等が、本件決定がYのウェブサイトで開示されるとX等の名誉又は信用が毀損されるなどと主張し、Yに対し、人格権に基づき前記の開示の差止め等を求めた。

<1審>
請求棄却

<原審>
Yの表明した限定事項付き結論はXらにつき監査の基準に適合しない事実がないのに当該事実が見受けられるとしてされたもの⇒本件決定はその前提となる事実を欠く⇒請求認容。

<判断>
原判決中の敗訴部分を破棄し、同部分を原審に差し戻した

<解説>
● Yは、その会則等において、品質管理レビュー制度を設けるとともに、上場会社と監査契約を締結している公認会計士又は監査法人の監査の品質管理の充実強化を図るため、上場会社監査事務所登録制度を導入し、品質管理レビュー制度に組み込んで運用。

● 品質管理レビューで、
XらがZの平成26年3月期の監査で現金勘定の出入金記録の確認のための現金元帳と通帳及び領収書等との突合を監査対象期間の一部につき実施しないまま無限定適正意見を表明⇒基準不適合事実が見つけられる⇒限定事項付き結論。
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原審:
前記突合を監査対象期間の全部につき実施すること等が「品質管理の基準」において必要とされているものではなく、Xらに基準不適合事実に該当する事実はない⇒本件決定は前提となる事実を欠く判断。

● 監査の基準においては、いわゆるリスク・アプローチの考え方が採用:
重要な虚偽の表示が行なわれる可能性が高い事項につき重点的に監査の人員等を充てることで監査を効果的かつ効率的なものとする監査手法。
①Zには、Xらによる前記の監査の以前から、営業損失の連続計上等の財政状態の悪化、多額の現金保有の状態かといった事象。
②同監査において、Zが期末の現金実査を拒否したため、実査の遅延が生じていた。

Yの公表する監査実施指針(監査基準委員会報告書等)において、
不正な財務報告若しくは資産の流用につながり得るもの(不正な財務報告の動機・プレッシャーないし資産流用の機会)又はこれらの兆候を示すもの(不正な財務報告の姿勢・正当化)として、典型的なリスク要因として位置付けられている。

Zの監査におけるリスク(とりわけ、現金預金に関して財務諸表における重要な虚偽表示が生ずるリスク)は相当高いものであった

Xらは、Zの監査人として、前記リスクを適切に評価した上で、これに個別に対応した監査手続を実施し、監査意見の形成に足りる十分かつ適切な監査証拠を入手することが求められていた。
現金元帳と通帳及び領収書等との突合は、口座から出金された金員の現金勘定への入金記録を、当該出入金に係る証ひょう類と現金元帳との突合により網羅的に確かめることのできる実証手続⇒現金預金についての前記リスクに対応した監査証拠を入手し得る。

Xらが前記突合を監査対象期間の一部に限定して実施したこと等が前記リスクとの関係で十分かつ適切なものであったといえるか否かの点を、
前記の限定の理由や、Zの内部統制の整備状況の調査結果等を勘案して検討しなければ、Xらにつき基準不適合事実がないとはいい難い。

● 三浦補足意見:
・・・上場会社監査事務所登録制度が、公認会計士の監査業務の専門性及び独立性を踏まえ、公認会計士等によって組織される上告人の制度として運用される趣旨等⇒上記事実があるとした場合はには、これを前提としてされた品質管理委員会の決定については、その専門性、独立性を踏まえた知見に基づく判断として、その合理的な裁量が尊重されるべき。

判例時報2487

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