区分所有建物の管理組合の理事会規則(理事排除条項)が無効とされた事案
大阪高裁R1.10.3
<事案>
Xらは大型商業用ビルである本件ビルの区分所有者で、
Y1は、本件ビルの区分所有者全員で構成された団体(区分所有法3条)である管理組合であり、
Y2は、本件ビルの区分所有者集会において区分所有法上の管理者に選任された者
Xらが、Yらに対し、
①「理事が管理組合に対し、原告又は被告になったとき」に理事の資格を失うことを定めた理事会規則の無効確認を求め、併せて、
②本件ビルの改修工事の差止め、及び、
③同工事に係る1審判決添付の別紙議案目録記載の議案を可決した区分所有者集会決議の無効確認を求めた。
Y1の理事会規則には、「理事が管理組合に対し、原告又は被告となったときは、その日をもって理事の資格を失い、理事会規則4条1項の任期中は復帰しないものとする」との理事排除条項が存在。
平成25年5月に開催された理事会で承認され、理事会規則の一部となった。
<主張>
本件理事排除条項について、Xらは、
①理事である区分所有者の選挙権及び被選挙権を制限し、又は、Y1の理事が有する裁判を受ける権利を侵害⇒公序良俗に反する
②本件管理規約による授権がなく、又は、授権の範囲を逸脱
③本件理事排除条項を定めたY1の理事会決議が決議要件を満たしていない⇒無効又は不存在
であるなどと主張し、無効確認を求めた。
<一審>
①理事の資格喪失事由については、本件管理規約において、「理事会について必要な事項」として、理事会の決議によって定められる理事会規則に委任しているものと解される。
⇒本件理事排除条項は本件管理規約に違反しない。
②本件理事排除条項の承認に係る議案の理事会決議においては、理事会規則によって委任状の提出により出席したものとみなされる理事らの議決権を賛成票に加算すべき。
⇒Y1に対する本件理事排除条項の無効確認請求を棄却。
<判断>
●
①本件管理規約においては、原則として全ての区分所有者に理事となる被選挙権が与えられ、例外的に被選挙権が制限されることが定められており、本件管理規約に定める場合を超えて役員の資格喪失事由を定めることを理事会規則に委任する旨の規定は存在しない。
②理事の資格制限事由を理事会で決めるには、本件管理規約による明文の委任が必要であると解されるところ、「役員及び理事会について必要な事項」は理事会の決議に基づいて定めることを理事会に委任したものと解することはできない。
⇒
本件管理規約による委任の範囲を逸脱した無効なもの。
●Yらの主張:
本件理事排除条項の承認に係る議案を決議した理事会において、
理事会規則の規定により議決権を行使する権限を当日の議長に授与すること、及び代理による議決権の意思表示は「棄権」に限定することを記載した委任状を提出した理事らの意思は、理事会に現に出席した理事の過半数を得た決定に従うという趣旨。
vs.
委任状を提出した理事らが、本件理事排除条項の承認に係る議決案について「棄権」の意思表示⇒同議案の理事会決議は、出席理事の過半数という理事会規則の決議要件を満たしていないため無効。
●
⇒本件理事排除条項の無効確認を認容。
判例時報2482
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