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2021年8月19日 (木)

公務起因性が肯定された事案

盛岡地裁R2.6.5

<事案>
Xが、Xの夫であり市の設置運営する診療所所長を務めていた医師Aが双極性感情障害(「本件疾患」)を発症して自殺したことは、Aが唯一の常勤医師として休日出勤やほぼ毎日の宅直を伴う診療業務を行なったこと、診療所所長として入院患者虐待問題及び病床廃止計画への対処を迫られたことなどにより、強度の精神的及び肉体的負荷を受けたためであって、公務に起因するもの⇒
Y(地方公務員の災害補償基金)に対し、
①本件災害を公務外災害と認定した処分の取消し及び
②本件災害を公務災害と認定することの義務付けをそれぞれ求めた。

<判断>
公務起因性が認められるためには公務と災害との間に相当因果関係が必要であり、
精神疾患発症の公務起因性については、公務が他の原因と協働して精神疾患を発症させ又は増悪させただけでは足りず、当該公務自体に社会通念上客観的に当該精神疾患を発症させ若しくは増悪させる一定程度以上の危険性が内在し又は随伴し、当該危険性が点実化したことにより当該疾患を発症したこと、すなわち、当該公務がその精神疾患の主因又は有力な要因となりうる程度のものであることが必要。

精神疾患等の公務起因性についての判断方法や業務における強度の精神的又は肉体的負荷を与える事象を列挙している「精神疾患等の公務災害の認定について」(平成24年3月16日地基補第61号)につき、裁判所の判断を限界付けるものではなく、複数の事象がそれぞれ単独では当該規定に該当しない場合であっても、裁判所は、各事象を個別的に捉えるのではなく、それらの相互作用も考慮して総合的にみて、公務起因性を判断すべき

①業務内容⇒強い精神的又は肉体的負荷をもたらすもの。
②診療所における入院患者虐待問題について一手に対応⇒精神的負荷は極めて大きかった。
③市当局の見解に従わない者に対する見せしめと捉えられても致し方ない対応を受ける⇒強い精神的負荷を受けた。
⇒平成25年1月以降、特に同年11月頃からの公務による精神的及び肉体的な負荷は本件疾患を発症させるほど客観的に過重であると認められる。

Aが以前抗うつ薬を服用していた⇒本件疾患の発症にAの個体側要因が全く影響しなかったと直ちにいうことはできない。
but
①前記の業務の客観的過重性に加え、
②それとAの様子に変化が生じた時期との関係を指摘

個体側要因によって発症したというよりは、過重な業務によって発症したと考えるのが自然⇒本件疾患の発症に個体側要因が作用したとのYの主張を排斥。

<解説>
本判決は、本件災害発生前の複数の事象を総合的に検討。

本件疾患発症前の6か月間におけるAのタイムカード上の時間外労働時間が約30時間から50時間弱の間で推移⇒個々の事象は「精神疾患等の公務災害の認定について」上、公務起因性を認めるに足りるものではない。
but
各事象相互関係が見受けられることを考慮
Aの時間外労働時間数そのものには重点を置いていない
業務の特徴に即した判断を行った結果。

判例時報2482

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