相模原殺傷事件
横浜地裁R2.3.16
<事案>
死亡した被害者:19名、負傷にとどまった被害者:24名
<争点>
責任能力の有無及び程度
争点に関し、
裁判所が選任した鑑定人(K医師。50条鑑定人)と
弁護人が請求した専門家証人(L医師。私的鑑定人)
の尋問が実施。
<判断>
証拠上、本件犯行に相応の影響を及ぼした可能性があるといえる精神障害は、L医師が指摘する動因逸脱症候群(持続した高揚気分あるいは意欲の異常亢進等能動性が逸脱した状態)を伴う大麻精神病のみ
⇒主にL鑑定が排斥されるかどうかという観点から検討を加えている。
①犯行動機の中核である被告人の意思疎通ができないと自己が考える障害者に関する考えは、被告人自身の本件障害者施設での勤務経験を基礎とし、感心を持った世界情勢に関する話題を踏まえて生じたものとして思考の形成過程に病的な飛躍はなく、了解可能。
②L鑑定が動因逸脱症候群の症状(能動性の逸脱)が元も顕著に表現された場面とした本件犯行において、被告人は、前記の犯行動機を逸脱した不合理な言動をとっておらず、その他の場面の含めて能動性が逸脱した状態は認められない
⇒L鑑定は採用できない。
①犯行動機の形成過程に照らして動機が了解可能
②本件犯行が計画的に敢行されたものであり、動機との関係で一貫した合目的的なものである
③被告人が本件犯行を違法であると認識していた
⇒
結論として大麻又はこれに関係する何らかの精神障害が本件犯行に影響を与えたとは考えられない。
⇒
完全責任能力を肯定。
判例時報2482
大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
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