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2021年8月31日 (火)

別居親の面会交流を実質的に保障する立法をしなかったことが違法であると主張して、国に対して国家賠償を求めた事案。

東京高裁R2.8.13

<規定>
民法 第七六六条(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
 
父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
3家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
4前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。

<原審>
●別居親の面会交流権を保障する立法をしなかったという立法不作為の違法性について
立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、
国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国家が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、
例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けるものというべき。

●憲法26条に基づく主張について
旭川学テ最高裁判決:
子どもの教育は、その最も始源的かつ基本的な形態としては、親が子との自然的関係に基づいて子に対して行う養育、監護としてあらわれる」と判示する部分があることを指摘。
but
同部分は子の教育の最も基本的な形態が親の監護としてあらわれるという社会的事実を指摘しているにすぎず、それ以上に憲法上の権利として監護権や面会交流権を保障されていることを判示する趣旨とは認められない。

●児童の権利に関する条約及び憲法98条2項に基づく主張について
最高裁H17判決の趣旨⇒仮に立法不作為が条約の規定に違反するものであるとしても、それゆえに国会議員の立法不作為が直ちに違法の評価を受けるものではない。
but
条約が、直接締約国の個々の国民に対し具体的な権利を保障するものである場合に、その権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠るときには、例外的に国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものと解する余地もある。
特定の条約が、国内法による補完ないし具体化といった措置を執ることなく、直接個人の所属国にン対する権利を保障するものとして、国内の裁判所において適用可能であるというためには、当該条約によって保障される個人の権利内容が条約上具体的で明白かつ確定的に定められており、かつ、条文の文言及び趣旨等から解釈して、個人の権利を定めようという締約国の意思が確認できることが必要。

条約9条3項:
「・・・・直接の接触を維持する権利を尊重する。」と規定

あくまで児童の別居親との面会交流の権利を尊重する旨を定めているにすぎず、
別居親に対して直接権利を保障する旨の文言はなく
児童に与えられる権利の内容も具体的で明白とはいえない

同条約が、国内法による補完ないし具体化といった措置を執ることなく国内において適用可能なものとはいえず、あくまで子の面会交流の権利を尊重する旨約したものにすぎない。

児童の権利に関する条約が、我が国の個々の国民に対し、面会交流について直接権利を付与するものとはいえず、面会交流権を保障するものであるともいえない

児童の権利に関する条約及び憲法98条2項を根拠として、別居親の面会交流権が憲法上保障された権利であるということはできない

●憲法14条1項に基づく主張について
法14条1項:
事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のもの(最高裁)。

原告ら:
「平穏な婚姻関係状態にある父母の下で育つ子」と比較して、
「別居あるいは離婚した父母の下で育つ子」
が父母の双方と日常的に交流する機会が少なくなっていることが憲法14条1項に違反。
vs.
交流機会の差異は、本質的には、社会的事象としての両親の別居により生じるものであり、面会交流に関する立法の不作為によって親子の交流の機会に不平等が生じたものとみることはできない
⇒その差異を法的な差別的取扱いとみることは困難。

憲法14条1項が実質的平等までを直接保障した規定とは解することはできない(最高裁)。
⇒別居親の面会交流権における現行法の規定が、憲法14条1高に違反するものとはいえない。

●憲法13条に基づく主張について
二宮教授:
面会交流を子の権利として捉えるとともに親の権利であるともとらえる複合的権利説を前提として、別居親の面会交流も、親としてのアイデンティティを確立するという人格的利益を保障するものであり、面会交流の権利は別居親の人格的生存にとって不可欠のこと⇒憲法で保障される人格権と解釈することができる可能性を指摘。
vs.
他の学説。
①面会交流の問題は、・・・・問題であり、現行法・・・の規定が、別居親による面会交流を直接阻害するという関係にあるとはいえない。
②・・・当該子及び両親の具体的な状況等によって異なり、特に、子の利益(民法766条1項)又は福祉が優先して検討されるべきであり、その観点から、面会交流を全面的に制限すべき場合も存する・・・。

別居親において、面会交流について人格的な利益を有することを前提として、その具体的な内容を特定することは困難。

別居親において、子の養育に関して人格的な利益を有するとしても、これを憲法13条により保障された権利と解することは困難なものというほかない。

●憲法24条2項に基づく主張について
憲法24条2項は、離婚や家族に関する事項について、具体的な制度の構築を第1次的に国会の合理的な立法裁量にゆだねるとともに、その立法に当たっては、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべきであるとする要請、指針を示すことによって、その裁量の限界を画したもの(最高裁)。

<判断>
●別居親の面会交流権が憲法上保障されており、その権利行使のために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であって、それが明白であるとは認められない⇒別居親の面会交流権についての立法不作為は、国賠法1条1項の適用上、違法の評価を受けるものとはいえない。

婚姻及び家族に関する法制度を定めた法律の規定が憲法13条、14条1項に違反しない場合に、更に憲法24条にも適合するものとして是認されるか否かは、当該法制度の趣旨や同制度を採用することにより生ずる影響につき検討し、当該規定が個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超えるものとみざるを得ないような場合に当たるか否かという観点から判断すべき(最高裁H27.12.16)。
別居親と子の面会交流については、民法766条により、子の監護に関する事項として、子の利益を最も優先して考慮して父母の協議で定めるものとされる一方で、
協議により定めることができないときは、家庭裁判所がこれを定めることとされており、・・・・間接強制をすることができるものとされている

面会交流に関する以上の法制度は、別居親と子との面会交流が不当に制約されることがないようにされているものといえ、個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠くものとはいえない。

判例時報2485

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