« 参院選(比例代表選出)議員の選挙についていわゆる特定枠制度を定める公選法の規定の合憲性 | トップページ | 市が、土地を売却する際の、浸水被害状況等について情報開示・説明義務違反(肯定) »

2021年8月 2日 (月)

預金口座に対する差押命令の一部取消しが認められた事例

大阪地裁R2.9.17

<事案>
YがXの第三債務者に対する預金債権(本件預金債権)を差し押さえた

XがYに対し、本件預金債権は、
Xが社会福祉法人法坂府社会福祉協議会から貸付けを受けた生活福祉資金及び勤務先からの給与を原資とするもの⇒民執法152条1項1号及び2号所定ないし性質上の差押禁止債権異当たる

本件預金債権が差し押さえられると申立人の生活が著しく困窮する

民執法153条1項に基づいて、本件預金債権に係る債権差押命令(本件差押命令)の取消しを求めた

<判断>
本件預金債権のうち1万6897円を超える部分に対する差押命令を取り消した。
差押え当時の本件預金債権の原資が、本件貸付金と債務者に支払われた給与であると認定した上で、債務者が学習塾に支払った金額を控除して、差押禁止部分を特定

<解説>
● 差押禁止債権である年金や労災保険金が受給者の預金口座に振り込まれると、受給者の金融機関に対する預金債権に転化してその一般財産となり、もはや差押禁止債権としての属性は失われ、年金や労災保険金が入金された預金債権に対する差押えは可能。

● 一方、民執法153条1項は、執行裁判所は、「債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して」差押命令の全部若しくは一部を取り消すことを認めている

裁判所:差押禁止債権が認められる趣旨が債務者の生活保障を確保するため⇒債務者側と債権者側の個別事情のバランスを考慮して範囲変更の可否を決する

差押禁止制度が債務者の生活保障、生活維持のための保護規定民執法153条1項において考慮されるべき債務者の生活状況とは、
現在の一般的な生活水準に比較して、債務者が差押えによって著しい支障を生じない程度の生活水準を確保し得るか否か」ということ。


認めた裁判例:
・債務者の生計費が統計上の生計費よりかなり低額⇒債務者が生計費を浪費しているとはいえない
・ 請求債権が債務者の父親の負った債務であり、相続放棄の効力について係争中であること、差押えが禁止される範囲が拡張された後も、債権者は債務者の給与から高額の返済を受けることができる
・年金を原資とするものと認めるのが相当

棄却した裁判例:
・扶養義務を負う子らがあり、債務者が年金と長男の援助により生計を立てているbut債権者の債権回収の前に債務者が預金口座から230万円を引出している⇒債務者に誠実性や任意履行の意思が欠如している。
債務者が差押え時の約2週間前に預金口座から100万円を引き出し、生計に関係しない費用に相当額を支出した


令和2年4月1日に施行された令和1年法律第2号による改正後の民執法:
・裁判所書記官が、差押命令を送達する際に、債務者に、差押金歳債権の範囲変更の申立てをすることができること等を教示(145条4項)
・差押債権が給与等の債権⇒取立権の発生までの期間が、債務者に差押命令が送達されてから原則4週間に伸長(155条2項)

本件:
前記改正後の民執法が施行された後に申し立てられた差押禁止債権の範囲変更(取消)事件について、合議体でされた決定

判例時報2481

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

|

« 参院選(比例代表選出)議員の選挙についていわゆる特定枠制度を定める公選法の規定の合憲性 | トップページ | 市が、土地を売却する際の、浸水被害状況等について情報開示・説明義務違反(肯定) »

判例」カテゴリの記事

民事」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 参院選(比例代表選出)議員の選挙についていわゆる特定枠制度を定める公選法の規定の合憲性 | トップページ | 市が、土地を売却する際の、浸水被害状況等について情報開示・説明義務違反(肯定) »