使用者が開催条件に固執⇒団体交渉が開催されず⇒不当労働行為(労組法7条2号)の成立を肯定
東京地裁R2.1.30
<事案>
Xの従業員を組合員とする労働組合であるZが、Xが不合理な開催条件にう固執してZとの団体交渉を正当な理由なく拒否⇒都道府県労働委員会(埼玉県労働委員会)に対し救済を申し立てた⇒申立てを認容⇒Xが中央労働委員会に再審査の申立て⇒同委員会がこれを棄却する命令⇒Xが同命令の取消しを求めた。
Xは、
①団体交渉に関する一切の情報を正当な理由なく第三者に開示又は漏えいえしない
②団体交渉において録音及び撮影を行わない
③団対交渉当日はX代理人であるA弁護士の議事進行に従う
を団体交渉の開催条件として提示。
<争点>
Xが本件各団体交渉を「正当な理由」(労組法7条2号)なく拒否したか否か
<判断>
●団体交渉の開催条件等の労使間合意により決定するのが本来の在り方
but
一方当事者が自己の開催条件に固執した結果として団体交渉が解されなかった場合には、団体交渉を拒否したとみられることもあり得る。
この場合の団体交渉拒否に「正当な理由」があるか否かは、従前の労使関係や団体交渉等の経過を踏まえ、労働条件等を含む労使関係について労使対等の立場で合意により形成するという団体交渉の目的に照らし、一方当事者が求める開催条件等の内容に必要性が認められるか否か、その内容が円滑な団体交渉実施等の観点に照らして合理的か否か、他方当事者の利益を不当に害するものか否かなどの事情を総合して判断すべき。
●守秘義務条件:
①団体交渉の内容等は、労働組合の目的達成のため公表の必要な場合がある
②必ずしも秘密として保護すべき必要性がたかくないものも含まれる
⇒
労使の合意がないにもかかわらず団体交渉に関する一切の情報について守秘義務への同意を開催条件とすることが合理的であるということはできず、本件各団体交渉の議事事項をみても、守秘義務条件の必要性及び合理性は認められない。
録音撮影禁止条件:
①団体交渉の内容の正確な記録は労使双方にとって必要がある
②企業秘密に当たる情報に言及する際は録音を停止するなどの個別対応も可能
⇒
少なくとも団体交渉の全過程における録音を一律に禁止することに当然に必要性及び合理性があるということはできない。
本件においても、A弁護士が従前のやりとり記録していなかったとも思われる発言
⇒
録音撮影禁止条件の必要性及び合理性は認められない。
議事進行条件:
団体交渉における議事進行は、団体交渉の帰すうを左右し得るもの
⇒労使対等の立場で行うべきであり、使用者代理人が一方的に議事進行を行うことが当然に合理的であるとまではいえない。
・・・
⇒
議事進行条件の合理性を認めることはできない。
●
⇒
本件において団交3条件の具備を要求する必要性及び合理性を認めることはできず、団交3条件への不同意を理由とする団体交渉拒否には「正当な理由」がない。
<解説>
使用者が開催条件に固執したことによる団体交渉の不実施が「正当な理由」のない団体交渉拒否に当たるか否か:
条件の合理性を中心として使用者の態度の妥当性が判定される(菅野 )
判例時報2482
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