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2021年8月26日 (木)

銀行の行内通達等の情報漏えい⇒懲戒解雇・退職金不支給の事案

東京地裁R2.1.29

<事案>
原告は、対外秘である行内通達等を無断で多数持ち出し、出版社等に内容を漏えい⇒懲戒解雇処分を受け、退職金約1200万円を不支給とされた。
被告の退職金規定には「懲戒処分を受けた者に対する退職金は減額又は不支給となることがある」との規定。、

訴訟
本訴:
原告が被告に対し、
主位的に、
懲戒解雇が無効であるとして、雇用契約上の地位確認並びに未払賃金及びこれに対する遅延損害金及びの支払を求め
予備的に
懲戒解雇が有効であったとしても退職金の不支給は不合理であるとして、退職金及びこれに対する遅延損害金の支払等を求め

反訴:
被告が原告に対し、原告の居住する社宅の明渡し及び賃料相当損害金の支払等を求めた

<争点>
①懲戒解雇の有効性
②退職金支給の適法性

<判断>
●争点①
意図的な4件の情報資産の持ち出し及び15件の情報漏えいを認定
これらは被告の就業規則に定める懲戒事由に該当

懲戒解雇の相当性について、
①銀行として国内外における金融サービスを提供するという業務の性質上、情報資産の適切な保護と利用が極めて重要⇒被告は職員に対し情報セキュリティ対策の徹底を図っていた
but
原告は常習的に前記情報漏えい等を行なったもので、このような原告の行為は、情報資産の適切な保護と利用を重要視する被告の企業秩序に対する重大な違反行為である。

②原告の情報漏えいに基づき多数の記事が執筆されたことを推認され、これにより被告の情報管理体制に対する疑念を世間に生じさせ、被告の社会的評価を相応に低下させたといえる
③過去のけん責処分による反省もみられなかった

原告と被告との間の信頼関係の破壊の程度は著しく、将来的に信頼関係の回復を期待することができる状況もなく、懲戒解雇を選択することやむを得なかった。

懲戒解雇は客観的に合理的な理由があり社会通念上相当である。

●争点②
職員が懲戒処分を受けた場合に退職金を不支給とすることができるのは、労働者が使用者に採用されて以降の永年の勤続の功を抹消ないし減殺してしまうほどの著しく信義に反する行為がある場合に限られると解するのが相当。

原告の行為は、被告の企業秩序に対する重大な違反行為であり、被告の社会的評価を相応に低下させたものといえる
but
被告のサービスに混乱を生じさせたり、被告に具体的な経済的損失を発生させたりするものではなかったこと等
被告の約30年にわたる勤続の功を完全に抹消ないし減殺してしまうほどの著しく信義に反する行為であったとまでは評価することは困難
退職金の不支給は、7割を不支給とする限度で合理性を有する

<解説>
●懲戒解雇の有効性
懲戒解雇は懲戒として最も重い処分であり、被処分者の再就職の障害にもなる

当該行為の性質、態様、被処分者の勤務歴、その他の情状をしんしゃくし、解雇とするには重すぎるときは、懲戒解雇は無効とされている。

本件:
高度の情報管理が求められる銀行において意図的かつ常習的に情報を漏えいさせたという行為の性質⇒懲戒解雇の有効性。

●退職金不支給
退職金が賃金の後払い的性格を有しており、労基法上の賃金に該当
⇒退職金を不支給又は減額支給とすることができるのは、労働者の勤続の功を「抹消ないし減殺してしまうほどの著しく信義に反する行為があった場合に限られる。

判例時報2483

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