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2021年8月25日 (水)

税理士法人の損害賠償責任が認められ、その責任制限条項が消費者契約法10条後段に反し無効とされた事案

横浜地裁R2.6.11

<事案>
亡Aの相続税申告に関する税務代理を税理士法人であるYに依頼したXらが、Yには、前記業務に際し、租特法69条の4に定める小規模宅地等の特例の適用の可否を検討せず、その適用をしなかった過失があり、その結果、本件特例適用時より相続税額が高額に⇒Yに対し、債務不履行又は不法行為に基づき、損害賠償を求めた。
本件委任契約には、Yの委任事務処理上の過失によりXらに損害が生じた場合の賠償額を上限をXらの支払った報酬額(約350万円)とする旨の責任制限条項。

<争点>
①本件土地における特定同族会社事業用宅地等としての本件特例の適用対象該当性
➁本件責任制限条項の有効性
争点①については、本件特例の要件のうち、亡Aの死亡時、本件土地がいわゆる「準事業」、すなわち「事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うもの」(租特法施行令40条の2第1項)の用に供されていたといえるか

<判断>
●争点①:
不動産の貸付け等が準事業に当たるためには、当該不動産の貸付けが、相当の対価が定められ、かつ、相当程度の期間継続することを予定した賃貸借契約に基づいて行なわれていることが必要であるが、相続の開始前に、賃料外支払われたことを必須の要件とするものではない

本件賃貸借契約:
相当な対価といえる賃料が定められ、
更新条項が定められるなど、相当の期間継続することを予定していたものと認められる

本件特例の適用を肯定

●争点②
判例(最高裁H23.7.15)を引用した上で、
①相続税申告の税務代理という本件委任契約の性質上、Xらにおいて契約締結前に本件責任制限条項によって生ずるリスクの程度を見積もるのが困難
➁一般の消費者と税理士法人との間の契約であり、契約締結過程における双方の情報料や交渉力には、大きな差がある
③実際の契約締結過程において、YがXらに対し、Xが負担することとなる具体的なリスクの程度を推測可能な情報を提供しなかった

本件責任制限条項は消費者契約法10条後段に反するものであり無効

慰謝料等を除いた損害全額の賠償を命じた

<解説>
●争点①
課税要件の明確性の要請⇒課税額の減少に係る特例の適用について、明文のない要件を設けることには慎重であるべき。

事業用土地について本件特例が設けられている趣旨:
事業が雇用の場であるとともに取引先等と密接に関連している等事業主以外の多くの者の社会的基盤としてその処分等に制約を受けることにj鑑み、これに課税上特別の配慮をしたもの。
かかるとち処分の制約は、継続的に行うことを予定した賃貸借契約等が締結され、土地の利用が開始された時点で生じ得るもので、相続開始時点で初回賃料が支払われていたか否かによって必ずしも左右されない。

●争点②
消費者契約法 第一〇条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

本件責任制限条項が法10条後段にいう
「法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限」する条項に当たることは明らか

民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」に当たるかが問題。

平成23年判例:
消費者契約法の趣旨、目的に照らし、
当該条項の性質契約が成立するに至った経緯
消費者と事業者との間に存する情報の質及び量
並びに
交渉力の格差
その他諸般の事情を総合考慮して判断すべき。

これらの事情のうち、消費者と事業者との間の情報及び交渉力の格差の有無並びにその程度に特に留意すべきとの指摘(最判解説)

判例時報2483

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