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2021年8月14日 (土)

松橋事件再審無罪判決

熊本地裁H31.3.28

<事案>
平成24年、Xの成年後見人が、再審請求⇒平成28年6月30日、・・・新証拠によれば自白の重要部分に客観的事実との矛盾があるとの疑義が生じ、自白に有罪認定を維持し得るほどの信用性を認めることができなくなったとして再審開始決定⇒検察官即時抗告⇒福岡高裁が即時抗告を棄却⇒検察官の特別抗告も棄却⇒再審開始が確定。

<審理と判断>
平成31年2月に初公判、即日結審、第2回公判で判決が言い渡された。
検察官:Xの自白を含め、確定審で取調べ済みの証拠及び再審請求審で提出された証拠から数多くの証拠を、本件再審公判でも請求。
but
Xの自白については、
再審請求審における数年にわたる審理の中で、確定審が認めた自白の任意性、信用性の弾劾を目的とする詳細な弁護人の主張を踏まえ、多くの事実取調べの結果、自白の重要部分に客観的事実との矛盾があるとの疑義が生じた⇒その信用性が否定。

検察官:本件につきXが有罪である旨の新たな立証は行わないと宣言。
Xの自白を、他の証拠等と共に採用し、相当の時間をかけてその信用性を検討したとしても、検察官による新たな立証がされない⇒客観的事実と矛盾する疑いがあることを根拠とする再審請求審の判断と異なる結論に至ることは想定し得ない。
Xの自白等を採用して改めて検討を加える必要性があるとは考えられず、可能な限り速やかに判決を言い渡すことが最も適当⇒検察官が請求したXの自白などを却下。
犯罪の証明がない⇒Xを無罪に。
本件と併合罪関係にあるため形式的に審理の対象となった別件(けん銃と実包所持)につき、確定判決が認定した事実を前提として、懲役1年(未決勾留日数を満つるまで算入)、けん銃等の没収を言い渡した。

<解説>
●刑訴法:再審公判について、基本的に審級に従った審理を行うとしか規定していない(同法451条1項)。
確定審で取り調べた証拠をどう取り扱うかとうい問題を中心にその性質が議論

A:覆審説:確定審とは全く別個のものとして新たにやり直す
B:続審説:上訴審による破棄差戻しの手続に準じて公判手続の更新と同様の手続による
近時の著名再審事件では、②続審的に運用されたものが多いと分析。
but
いずれの見解によるとしても、確定審で取り調べた証拠、さらに再審請求審で提出された証拠をどのように取り扱うかという点を中心として、再審開始に至った経緯に十分考慮しながら、再審公判の目的に沿って合理的な審理を行なう必要。

●本件再審公判は、検察官が確定審で取調べ済みの証拠を再度証拠請求⇒①覆審説に沿った運用。

●松橋事件:確定判決が依拠したXの自白と矛盾することが明らかな証拠(布切れ)が、検察官手持ちの未提出証拠の中にあることが発見⇒再審開始、無罪判決につながった。
~再審における証拠開示の重要性。

判例時報2481

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