« 確定測量図の交付義務について争われた事例 | トップページ | 税理士法人の損害賠償責任が認められ、その責任制限条項が消費者契約法10条後段に反し無効とされた事案 »

2021年8月24日 (火)

既存障害と新たに生じた障害とが、日本スポーツ振興センターが行なう災害救済給付制度における「同一部位についての障害」に該当するとされ、障害見舞金の支払請求が棄却された事案

福岡高裁R2.7.6

<事案>
Y2:独立行政法人日本スポーツ振興センターであり、独立行政法人
X1は、先天性の脳性まひにより身体障碍者福祉法別表第1級の認定を受け、特別支援学校に在籍。
給食介助中、誤嚥窒息に陥り、低酸素脳症に由来する重篤な脳障害を後遺。
X1の母であるX2は、Y2に対し、障害見舞金の子宮を請求⇒Y2は本件省令21条5項を根拠に不支給決定をし、不服審査請求に対しても同様の回答。

X2は、
①本件省令21条5項が、第1級の既存障害を持つ者とそうでない者を合理的な理由なく差別するもの⇒憲法14条1項に違反し、また、センター法が定める障害見舞金の支給目的とも整合せず、センター法の委任の範囲を逸脱する違法なもの⇒本件省令21条5項の無効を主張
②その救済措置として、憲法13条及び29条の直接適用により、第1級相当の障害見舞金の支払を求め、

更に、本件省令21条5項が無効でないとしても、既存障害と本件事故による後遺障害は「同一の部位」の障害には当たらないと主張。

<解説>
独立行政法人日本スポーツ振興センター法16条2項は、災害共済給付の給付基準等の策定を政令に委任⇒施行令3条1項2号は、障害見舞金の額について文科省令で定める額⇒省令21条1項は、障害見舞金の額を別表で規定。
別表は、労基法施行規則別表第2及び労災法施行規則別表第1の身体傷害等級表(「労災別表」)に倣って策定

労災別表について:
既に身体障害がある者が、負傷又は疾病によって同一部位について障害の程度を加重した場合には、その加重された障害の該当する障害補償の金額より、既にあった障害の該当する障害補償の金額を差し引いた金額の障害補償が行なわれる(労基法施行規則40条5項、労災法施行規則14条5項も同様)。
「同一部位」とは「同一の系列」の範囲内をいうとされ、同一部位に新たな障害が加わったとしても、その結果、労災別表上、既存の障害よりも現存する障害が重くならなければ「加重」に該当しないとされている。

本件省令21条5項もまた、労基法施行規則40条5項等と同様、
「既に障害のある児童生徒等が・・・同一部位についての障害の程度を加重した場合の傷害見舞金の額は、加重後の障害の等級に応ずる障害見舞金の額から加重前の障害の等級に応ずる障害見舞金の額を差し引いた額」と規定。

既存障害として「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」(第1級3号)に該当する脳障害を有する児童生徒等が、学校事故により更に重篤な脳障害を負うに至ったとしても、既存障害と後遺障害は「同一の系列」の範囲内にある障害であり、かつ、既存障害である第1級より重い等級は存在しない⇒障害見舞金を受け得ない。

自賠責保険の分野では、労基法施行規則40条5項等と同様の規定である自賠法施行令2条2項の解釈について、同項の「同一の部位」とは、「損害として一体的に評価されるべき身体の類型的な部位」をいうと解すべきであるとして、脊髄損傷により体幹と両下肢の機能を全廃する既存障害(中枢神経の障害)を有していた者が、交通事故により頚部痛及び両上肢の痛み・しびれの後遺障害(末梢神経の障害)の発生を主張した事案において、胸椎と頚椎とは異なる神経の支配領域を有し、それぞれ独自の運動機能、知覚機能に影響を与えるもの⇒既存障害と事故によって生じた障害は、「同一の部位」には当たらないとした裁判例(東京高裁)がある。

<判断>
災害救済給付制度が、被災児童生徒の迅速な救済を図るために、互助共済の理念に基づいて創設された、保険や損害賠償とは異なる特殊な制度
その具体的な給付内容は、制度の目的及び理念を踏まえながら、学校災害の傾向や状況、給付財源、他の社会保障制度との関係等をも考慮した上で、最終的には立法者による政策的な判断によって定めざるを得ない

本件施行令や本件省令が委任の趣旨を逸脱して違法となり得るのは、その内容が著しく合理性を欠き、およそ被害児童生徒の迅速な救済に資するものでないと認められる場合に限られるというべきであり、憲法違反の問題も、基本的にはその限度で生じるにすぎない。
・・・・本件省令21条5項については、その趣旨が、障害のない状態から一定の障害を残存した場合と、既存障害が加重されて現在の障害に至った場合との均衡ないし公平を確保することにある⇒その調整方法として一定の合理性がある。

<解説>
自賠法の下では、保険会社が支払うべき保険金の額は後遺障害等級表によって定められているものの、自賠法16条1項に基づく被害者の保険会社に対する直接請求権は、損害賠償請求権であって保険金請求権ではない(最高裁)⇒「同一の部位」に当たるかどうかは、損害として一体性があるかどうかを基準とすべきであるという解釈が可能に。

判例時報2483

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

|

« 確定測量図の交付義務について争われた事例 | トップページ | 税理士法人の損害賠償責任が認められ、その責任制限条項が消費者契約法10条後段に反し無効とされた事案 »

判例」カテゴリの記事

民事」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 確定測量図の交付義務について争われた事例 | トップページ | 税理士法人の損害賠償責任が認められ、その責任制限条項が消費者契約法10条後段に反し無効とされた事案 »