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2021年7月13日 (火)

実父の養育費支払義務が未成年者の養子縁組により無くなる場合の始期


<事案>
未成年者らの実父である申立人Xが、未成年者らの実母である相手方Yに対し、未成年者らがYの再婚した夫である利害関係参加人Zと養子縁組⇒未成年者らの扶養義務は第1次的には実母と養父が負うべき⇒離婚時に合意された養育費の支払免除の調停申立て⇒不成立⇒審判に。

<原審>
①未成年者が親権者の再婚相手と養子縁組⇒未成年者らの扶養義務は、第1時的には親権者及び養親となった再婚相手が負う
②Y及びZにおいて未成年者らを養育することができず、Xにおいて第一次的に扶養する状況にあるとはいえない⇒XがYに支払うべき養育費は0とすべき
③養子縁組によってZが未成年者らの養育を引き受けたという事情の変更は、専らY側に生じた事由⇒始期については、Zが未成年者らと養子縁組した平成27年12月15日とするのが相当。

<判断>
始期について、
①既に支払われ費消された過去の養育費は合計720万円に上るうえ、その法的根拠を失わせて多額の返還義務を生じさせることはY及びZに不足の損害を被らせる
Xが、Yの再婚や未成年者らの養子縁組の可能性を認識しながら3年以上にわたって合計720万円の養育費を支払い続けた⇒Xは養子縁組の成立時期等について重きを置いていたわけではなく、未成年者らの福祉の充実の観点から養育費を支払い続けたものと評価することも可能

支払義務がないとする時期を本件調停の申立時として、原審判を変更。

<解説>
●養育費の減額
養育費の調停・審判がなされた後、事情の変更が生じたときは、家裁は、審判の変更をすることができる。

「事情の変更」協議又は審判の際に考慮され、あるいはその前提とされた事情に変更が生じた結果、調停や審判が実情に適さなくなったこと

前協議又は審判の際に予見されなかった事情であり、かつ、前協議又は審判を維持することが困難な程度に事情の変更が顕著であることを要する。
←法的安定性の要請。

●始期
減額の変更の始期についてはは、原則として事情変更時に遡及
権利者と義務者のいずれの側に生じた事由であるかなどの諸事情を総合考慮して、変更の遡及効を制限すべき事由が認められるかを判断する枠組み。

判例時報2480

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