裁判員対象事件からの除外
大阪高裁R2.10.27
<事案>
検察官は基本事件につき、裁判員法3条1項の要件があると主張し、対象事件からの除外を請求⇒神戸地裁はこれを却下⇒検察官即時抗告
<規程>
裁判員法 第三条(対象事件からの除外)
地方裁判所は、前条第一項各号に掲げる事件について、被告人の言動、被告人がその構成員である団体の主張若しくは当該団体の他の構成員の言動又は現に裁判員候補者若しくは裁判員に対する加害若しくはその告知が行われたことその他の事情により、裁判員候補者、裁判員若しくは裁判員であった者若しくはその親族若しくはこれに準ずる者の生命、身体若しくは財産に危害が加えられるおそれ又はこれらの者の生活の平穏が著しく侵害されるおそれがあり、そのため裁判員候補者又は裁判員が畏怖し、裁判員候補者の出頭を確保することが困難な状況にあり又は裁判員の職務の遂行ができずこれに代わる裁判員の選任も困難であると認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、これを裁判官の合議体で取り扱う決定をしなければならない。
<判断>
「おそれ」が具体的なものであることを要し、何らかの具体的事情により認められる必要があるといわれているのは、裁判員等に過度の負担を求めることとならない一般的・抽象的な懸念にとどまる場合にまで、これに当たるとされなようにする趣旨である。
①基本事件前後の両組の構成員等が関係する抗争事件の発生状況及び基本事件の位置付け、
②警戒区域外で関係者の会合や両組間の紛争と見られる事件が発生していること等
⇒基本事件後に両組の構想状態が激化したことを疑わざるを得ない。
~
抗争の現状につき原判決と異なる評価。
両組はいずれも神戸市に本拠を置く大規模な暴力団組織で、傘下組織も含めた構成員、周辺者の数は極めて多数に及ぶ上に相互の反目等の感情が強く、個々の者らの基本事件の裁判等の捉え方や行動は予想し難く全員が統制のとれた合理的行動をとる前提に立てない⇒両組の構成員等が基本事件の公判傍聴の機会に接近すること等でいさかいを生じさせたり、市中において裁判員等に接近して働きかけを行なったりする危険を拭い去ることはできない。
~
原決定が、基本事件において有利な判断を得るために構成員等が裁判員等に働きかける強い動機はないなどとしていたのと異なる評価。
⇒
前記危険は具体的根拠に基づいた軽視できないもので、裁判所敷地内及びその周辺にとどまらず、裁判員等の普段の生活の場においても現実化し得るもの⇒裁判所が裁判員等の安全確保のために考え得る最大限の措置を講じることを当然の前提としつつも、これらの措置によっても前記危険を完全に除去することは困難
⇒裁判員法3条1項所定の要件を充足。
判例時報2474
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