死体血鑑定等
大阪高裁R2.10.2
<事案>
被告人が、被害者を何らかの方法により殺害した上、その死体を切断して複数個所に遺棄し、さらに、被害者死亡後に同人の預金を払い戻して窃取したとされた事案。
<争点>
被害者が何者かの加害行為によって死亡したか、加害行為、死体損壊・遺棄に係る被告人の犯人性、殺意の有無。
<判断・解説>
●死体血鑑定について
足利事件最高裁決定(H12.7.17):
科学的証拠を用いるためには、
①科学的原理の理論的正確性と
②当該具体的実施方法の科学的信頼性の充足
が必要。
本件:
血液鑑定として、採取血痕につき、付着したのが死体血かを鑑別する新たな鑑定方法(死体血鑑定)の信用性が重要な争点に。
死体血鑑定について、上記①②の各合理性を肯定し、被告人車両内に被害者の死体血が付着していたと認められる⇒被告人が被害者の死体を車両で運搬したとの間接事実を認定。
●死体損壊を伴い遺棄が加害行為の存在に及ぼす推認力
死体の損壊・遺棄状況が、被害者の死因が他人の加害行為であることを推認させる重要な間接事実と判断。
経験則は事案に応じた事実関係の下で適用すべきであり、その蓋然性の程度も事実関係に即して多様
but
本件のおような損壊を伴う死体遺棄の場合、他人の加害行為を推認させる力は強い。
①死体を多数の部位に切断し、複数個所に遺棄するとうい本件具体的態様
②特段の事情がない(死体に病死、事故死の痕跡がなく、かつ、被害者が自殺に至る事情がない)
⇒
死因が加害行為であることは優に推認できる。
死体遺棄に関与したものの、加害行為がない又は被告人がこれに関与していない事案の類型:
加害行為の痕跡がない場合:
①親族の年金受給の継続等を動機とする金銭取得類型
②葬儀や死亡届出等をせずに放置する死後対応煩瑣類型
③母親による嬰児遺棄類型
加害行為は実在するが被告人がこれに関与していないもの:
④加害行為の犯人肥後のために遺棄に関与する加害犯人肥後類型
⑤事故が人の死に関与した嫌疑を受けるなどの後難避けるため死体を遺棄する受嫌疑忌避類型
判例時報2474
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