出席停止の懲罰と司法審査
最高裁R2.11.25
<事案>
岩沼市議会の議員であった原告(控訴人・被上告人)が、市議会から科された23日間の出席停止の懲罰(「本件処分」)が違憲、違法⇒被告(被控訴人・上告人)(宮城県岩沼市)を相手に、その取消しを求めるとともに、議員報酬のうち本件処分による減額分の支払を求めた。
<原審>
最高裁S35.10.19を参照し、議員報酬の減額を伴う場合にはその適否は司法審査の対象となる⇒本件処分の取消し及び議員報酬の支払いを求める訴えを適法とし、これを不適法とした一審判決を取消し、差戻し。
被告が上告及び上告受理申立て
<判断>
上告⇒棄却
上告受理
普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は、司法審査の対象となる。
これと異なる趣旨をいう、昭和35年最大判その他の最高裁の判例を変更。
原審の判断は結論において妥当。
<解説>
昭和35年最大判:
地方議会の議員に対する出席停止の懲罰について、
司法裁判権が、憲法又は他の法律によってその権限に属するものとされているものの外、一切の法律上の争訟に及ぶことは、裁判所法3条の明定するところ。
ここに一切の法律上の争訟とはあらゆる法律上の係争という意味ではない。
一口に法律上の係争といっても、その範囲は広汎であり、その中には事柄の特質上司法裁判権の対象の外におくを相当とするものがある。
←
自律的な法規範もつ社会ないし団体に在っては、当該規範の実現を内部規律の問題として自治的措置に任せ、必ずしも、裁判にまつを適当としないものがある。
本件における出席停止の如き懲罰はまさにそれに該当する。
傍論で、除名の懲罰については、議員の身分の喪失に関する重大事項で、単なる内部規律の問題にとどまらず、本件における議員の出席停止のごとく議員の権利行使の一時的制限にすぎないものとは趣を異にしている⇒司法裁判の権限内の事項。
昭和35年最大判について、
一般に、地方議会の懲罰議決について、除名は司法審査の対象となるとしつつ、それ以外は司法審査の対象とならないものと理解。
宇賀裁判官補足意見:
①地方議会の議員に対する出席停止の懲罰が法律上の争訟に当たり、それにもかかわらず外在的制約があるとして司法審査の対象外とされるのは、例外を正当化する憲法上の根拠がある場合に限定される必要がある。
②憲法上、地方議会は国会ほどの自律性を認められていない。
③地方議会の自律性の根拠地方自治の本旨以外にはないところ、議員に対する出席停止の懲罰はその核心部分の1つである住民自治を阻害するものであり、地方自治の本旨を根拠に司法審査の対象外とすることはできない。
④出席停止の懲罰の実体判断については議会の裁量が認められ、過度に地方議会の自律性を阻害することにはならない。
判例時報2476
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