地方公共団体の徴収金の相続人に対する通知と消滅時効の中断
最高裁R2.6.26
<事案>
Y(埼玉県加須市)の市長Y市長が、国民健康保険税及びその延滞金の滞納処分として、Xの預金払戻請求権を差押え、さらに配当処分をした⇒Xがその取消し等を求めた。
<争点>
国民健康保険税に係る債権の消滅時効の成否(時効中断事由の有無)
<解説>
地方税の徴収権は5年の消滅時効。
その中断事由:
地税法18条の2第1項において納付又は納入に関する告知(1号)、督促(2号)等が規定
同法18条3項により民法の規定が準用⇒差押え及び承認も租税債権についてうい中断事由となる。
<1審>
平成23年1月の督促及び平成29年1月の本件差押処分が中断事由に当たることは争いがない。
but
その間に約6年が経過。
Y:平成24年納付が承認に当たり時効中断を主張
vs.
Xが本件各決定に係る税額を一貫して争っていた⇒Xが平成24年納付の際に納付しなかった部分につき債務を承認したものと認めることは困難。
⇒
時効消滅を認め、配当処分の取消請求を認容。
<原審>
平成24年納付は承認に当たらない。
but
本件承継通知(平成24年10月、Y市長がXに対しAの滞納金を相続人として同年11月16日までに納付するよう求める旨通知)は納付の告知(地方税法13条)に当たり、時効中断効が認められる。
<判断>
被相続人に対して既に納付又は納入の告知がされた地方団体の徴収金につき、納期限等を定めてその納付等を求める旨の相続人に対する通知は、これに係る地方税の徴収権について、地税法18条の2第1項1号に基づく消滅時効の中断の効力を有しない。
⇒
配当処分の取消請求を認容
<解説>
●国民健康保険税の賦課徴収に関する手続
地税法13条1項:
文書により納付又は納入の告知で、納付又は納入の期限等を記載
⇒納期限までに国民健康保険税に係る地方団体の徴収金を完納しない場合には、徴収吏員は、督促状を発し、督促状を発した日から10日を経過した日までに完納しないときは、滞納者の財産を差押えなければならない。
●納付又は納入に関する告知による時効中断
「納税に関する告知」「納入の告知」が時効中断校を有する
←
法令の規定により一定の手続と形式を要し、かつ公正慎重に行なわれるものであるから十分に確実性がのある者であり、私人が行う催告のような非形式的請求とは異なり、裁判上の手続に比べて必ずしも軽視できない公の手続行為であることに基づく。
再度の納付の告知に時効中断校が認められるか?
会計法上の納入の告知に関しては、1会限り行ない得るものであり、2度以上の納入の告知は、単なる催告にすぎず、それ自体では時効中断の効力は生じないと一般に解されている。
本判決:
地税法18条の2第1項1豪に基づく時効中断効は最初に行なわれたものについてのみ生ずる。
←
①地税法が、地方団体の徴収金の徴収に関して段階的な手続を定めており、納付又は納入の告知が繰り返されることを予定していない
②同告知の性質に照らして特別に時効中断を付与したものと解される。
判例時報2473
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