控訴取下げを無効と認め訴訟手続を再開・続行する決定に対する不服申立て
最高裁R2.2.25
<事案>
殺人被告事件で一審で死刑判決⇒控訴⇒控訴取下げ⇒控訴取下げは無効であるとして控訴審の審理続行を求めた⇒控訴審が、控訴取下げを無効と認め訴訟手続を再開・続行する旨の決定
⇒
検察官が、高裁に対して即時抗告に代わる異議申立てをするとともに、最高裁に対して特別抗告を申し立てた。
<判断>
高等裁判所がした控訴取下げを無効と認め訴訟手続を再開・続行する旨の決定に対しては、その高等裁判所に異議申立てをすることができる⇒原決定は、刑訴法433条1項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」に当たらない⇒本件特別抗告は不適法。
<解説>
●上訴取下げ⇒訴訟は終了。
被告人が、裁判所に対し、上訴取下げは無効であるとして審理の続行を求める
~ 職権発動を促すものにすぎない。
but
上訴取下げが有効と認められる場合は、上訴取下げにより訴訟が終了していることを明らかにし、その後の執行等に際して問題が生じないようにするため、決定で訴訟終了宣言をすることが判例上認められ、実務の通例。
訴訟終了宣言決定に対する不服申立て:
最高裁昭和61年決定:
①訴訟終了宣言決定が、訴訟の終結に係る裁判であるという実質に着目し、
②訴訟追行に関する形式的裁判という点で性質を同じくする控訴棄却決定に対して即時抗告が認められていること(刑訴法339条、375条)や、実質において近似する上訴権回復請求棄却決定に対して即時抗告が認められていること(刑訴法364条)等
⇒
訴訟終了宣言の決定は、その性質上、即時抗告をすることができる旨の規定がある決定として取り扱うべきものと解して、不服申立ての途を創設。
●裁判所において上訴取下げが無効であると判断⇒通常の手続に従って審理が続行される。
これにより上訴取下げが無効であることが外部的にも明らか⇒無効決定をする必要はない。
but
原審は、事案の重大性に鑑みて明示の無効決定をした。
本決定:
無効決定についても、性質上、即時抗告をすることができると解するのが相当であると判断し、刑訴法433条1項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」に当たらない⇒本件特別抗告を不適法とした。
判例時報2472
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