過小資本税制の適用が問題となった裁判例
東京地裁R2.9.3
<事案>
内国法人(本社または主たる事務所が日本国内にある法人)である株式会社Xが、かつてインサイダー取引規制違反により有罪判決を受けたこともある著名なアクティビスト投資家であってシンガポールに居住する非居住者であるAから、年利14.5%で合計164億円を借入れ、これに対する支払利子を、その課税所得計算上損金に算入して法人税の確定申告
⇒
課税庁から、Xは、その事業活動に必要とされる資金の相当部分を非居住者であるAから借りれによって調達⇒AはXにとって「国外支配株主等」に該当し、過小資本税制が適用される
⇒
前記支払利子の一部である約14億6250万円について損金算入を否認する旨の法人税等の更正処分等を受けた。
X:本件借入れが実行された時点では}Aは住所地をシンガポールに移転しておらず、非居住者ではなかった⇒本件借入れに係る利子は、過小資本税制の適用対象となる「国外支配株主等に支払う負債の利子等」に該当しない⇒本件課税処分の取消しを求めて争った。
<判断>
Aは、平成23年7月4日に東京都渋谷区からシンガポールに住所地を移転
同月5日に非居住者になった。
Xは、Aから同年6月30日から同年7月4日にかけて合計164億円にの上る本件借入れをし、Aが非居住者となった同年7月5日から本件借入れが完済された平成24年3月7日までの期間にAに対して当該期間に対応する利子を支払った
⇒かかる支払利子は「国外支配株主等に支払う負債の利子等」に当たる。
Xの主張
vs.
①貸付け後に貸主が住所地を日本国外に移転した場合には過小資本税制の規定が適用されないことになれば、内国法人が国外支配株主等から過大な貸付けを受けることによる租税回避を防止する趣旨が容易に潜脱される
②同号ロの文言上も、貸主が貸付けの実行時において非居住者である場合に限定する旨の定めはない
⇒
同号ロの要件が満たされている旨認定するためには、損金算入の可否が問題となっている利子との関係で、「当該内国法人がその事業活動に必要とされる資金の相当部分を当該非居住者等からの借入れにより調達している」と認められれば足り、貸付けの実行時において貸主が非居住者であることを要しないと解するのが相当。
・・・・
判例時報2473
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