三鷹事件第2次再審請求事件
東京高裁R1.7.31
<事案>
昭和24年7月に、旧国鉄三鷹駅で、運行を終了して待機電線に停車していた7両編成の無人電車が暴走して6人が死亡。
Aは再審請求中に死亡。本件請求人はAの長男。
<確定判決>
証拠構造:
Aの共犯供述及び検察官調書における供述(自白)が主要なもの
それを裏付けるものとして、
事件当夜にAを目撃したとするB1の公判供述と、
自白に沿う現場の状況(パンタグラフが1つだけ上がっていたことやコントローラー・ハンドルの固定状況など)
<再審請求>
理由の骨子:
新証拠⇒
①犯人は八社の段階で、本件電車の第2車両のパンタグラフを上昇させた
②犯人は本件電車の最後尾である第7車両の手ブレーキを緩解した
③犯人は第7車両の前照灯を転倒させた
④犯人は第7車両の扉(戸閉)連動スイッチを非連動にした
⇒
犯人は複数いて、第1、第2、第7各車両に侵入して操作を行なったことが明らかになった
⇒
本件車両の発車方法に関するAの単独犯行である旨の自白の根幹部分が否定された。
新証拠⇒B1の目撃供述の信用性が否定された。
新証拠⇒Aのアリバイが成立することが明らかになった。
<決定>
これらの新証拠は、Aの自白の根幹部分に重大な疑義を生じさせ、かつ確定判決の事実認定について合理的な疑いを抱かせてその認定を覆すに足る蓋然性のある証拠とはいえない⇒請求を棄却
<解説>
本件の証拠構造は、犯人性を認定する直接証拠はAの自白のみで、物的証拠や目撃供述はそれのみで主要事実を認定できない。
その自白は、単独犯行、共同犯行、否認という内容で7回にわたり不自然な変遷を繰り返している。
このような証拠構造において自白を信用できるとするためには、それを裏付ける相当強固な物的証拠が必要。
弁護人が提出した新証拠は、単独犯行の自白に沿うとされた物的証拠や目撃証拠を弾劾するものとして提出。
そのうちパンタグラフの損傷に関する新証拠は、旧証拠を完全に弾劾するとまではいえないとしても相当程度の弾劾力な持っていると思われ、その他の新証拠を総合すると、もともと強固とはいえない自白の信用性に合理的疑いを生じさせる可能性がないか否か、なお疑問が残る。
判例時報2465・2466
大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))
| 固定リンク
« 夫婦の一方の各本国法を適用⇒嫡出の推定が重複⇒民法773条の方法で父を確定することができるとされた事例 | トップページ | 取引相場のない株式の譲渡に係る所得税法59条1項所定の「その時における価額」が問題となった事案 »
「判例」カテゴリの記事
- 懲戒免職処分に先行する自宅待機の間の市職員の給料等請求権(肯定)(2023.05.29)
- 懲戒免職された地方公務員の退職手当不支給処分の取消請求(肯定)(2023.05.29)
- 警察の情報提供が国賠法1条1項に反し違法とされた事案(2023.05.28)
- 食道静脈瘤に対するEVLにおいて、鎮静剤であるミダゾラムの投与が問題となった事案 (過失あり)(2023.05.28)
- インプラント手術での過失(肯定事例)(2023.05.16)
「刑事」カテゴリの記事
- 詐欺未遂ほう助保護事件で少年を第一種少年院に送致・収容期間2年の事案(2023.05.07)
- 不正競争防止法2条1項10号の「技術的制限手段の効果を妨げる」の意味(2023.05.01)
- 保釈保証金の全額没収の事案(2023.04.02)
- 管轄移転の請求が訴訟を遅延する目的のみでされた⇒刑訴規則6条による訴訟手続停止の要否(否定)(2023.04.02)
- いわゆる特殊詐欺等の事案で、包括的共謀否定事例(2023.03.23)
コメント