市庁舎前広場の使用許可申請に対する不許可処分と国賠請求(否定)
金沢地裁R2.9.18
<事案>
日本国憲法の改悪に反対し、憲法を守ることを目的として設立された権利能力なき社団とその代表委員らが、金沢市庁舎前広場(本件広場)において憲法施行70周年周年を開催することを目的として金沢市長に対し許可申請⇒金沢市長が、金沢市庁舎等管理規則(本件規則)に定める禁止事項に該当するとして、申請に対する不許可処分(本件不許可処分)⇒職務上の義務に反してなされた違憲、違法な行為であるとして、国賠請求。
平成26年にも同様の訴訟を提起。
<判断>
本件不許可処分が金沢市長の裁量権の逸脱、濫用により違法であるとは認められない
⇒請求棄却。
<解説>
憲法21条1項が集会の自由を保障
⇒
公の施設における集会の開催を制限することが許されるか、
許されるとすればどのような要件の下に許されるのか。
最高裁:
①「一般公衆の共同使用に供することを主たる目的とする道路や公民館等の施設」と
②「特定の目的のために使用すべきものとして設置され、それ以外の目的に使用することを基本的に制限されている施設」とを区別し、
①については、「公の施設」の利用を拒否することが許容されるのは、「人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険の発生が具体的に予見される場合」「警察の警備等によってもなお混乱を防止することができないなど特別な事情がある場合」に限られるのに対し、
②については、「目的外使用の許否の判断が、原則として、管理者の裁量にゆだねられている」
と解している。(最高裁H7.3.7)
平成26年訴訟の1審判決:
判決理由において、
①本件広場が本来的に金沢市庁舎建物を訪れる来庁者及び被告職員の通行に利用されることが予定された金沢市庁舎の一部を構成
⇒地自法244条にいう「公の施設」に該当するとは認められず、本件広場にはパブリックフォーラムの法理が適用されるとは認められない。
②本件集会が本件広場において開催された場合には、被告が原告らの立場に賛同し、協力しているかのような外観を呈することとなり、地方公共団体である被告の中立性に疑問を抱かれる可能性があり、本件集会の当日やその前後のみならず、将来にわたって、被告の事務又は事業の執行が妨げられるおそれがあること
等を指摘。
対①
本件広場が実際に様々な表現行為の場として用いられ、かつ、人通りの多い道路に面した、表現活動に適した場所であったという機能面をより重視すべきであった
対②
このような理由による規制が憲法上容認されるためには、市民に市が集会の主張に賛同していると受け止められ、その結果、市の事務・事業の遂行が著しく備われる相当の蓋然性が必要であるところ、本件集会の開催を認めた場合、市の事務・事業の遂行を著しく損なう蓋然性があるとは言い難い。
判例時報2465・2466
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