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2021年2月10日 (水)

少年院仮退院者の戻し収容申請事件で期間を明示⇒違法とされた事案

福岡高裁R1.9.13

<事案>
少年院仮退院者の戻し収容申請事件において、審判当時15歳の少年に対し、審判日から1年後である「令和2年〇月〇日まで代1種少年院に戻して収容する」旨の主文を言い渡した原決定を重大な違法があるとして取り消したもの。

<解説>
●少年院仮退院者の戻し収容申請事件において、20歳を超えて少年院に収容する必要がある場合は、収容期間を定めることができ(更生保護法72条2項前段)、その者が既に20歳に達しているときは収容期間を定めなければならない(同条2項後段、3項)。
20歳に満たない者に対し、20歳に満たない収容期間を定めることができるかについては、1審の裁判例が分かれているとされてきたが、
本決定は、収容期間を定めることができないという法解釈。

同法72条2項は、対象者を20歳を超えて少年院に収容する必要がある場合に限って収容期間を定めることを規定⇒20歳に満たない収容期間を定めることは違法。


仮にこのような収容期間を定めた場合、少年院への収容期間を原則20歳までとする少年処遇の基本構造(少年院法137条1項参照)に反することとなり、収容継続申請の対象ともならない(少年院法138条)から矯正の成果の有無にかかわらず退院を許さざるを得ず、退院後は保護観察の対象ともならない(更生保護法48条2号)という、法の予定しない事態が生じる。

●少年保護事件の抗告審においては、自判制度が存在しない⇒原決定取消の謙抑的な運用が求められる。
but
本事案においては、収容期間を定めた主文が違法⇒原決定には「決定に影響を及ぼす法令の違反」(少年法32条1項)があると言わざるを得ない。

原決定:
その理由中において、主文で示した期間は法定の収容期間を変更するものではなく処遇関係機関の裁量を妨げない旨説示。
vs.
①決定の主文は、審判において少年に告知される(少年審判規則3条1項、更生保護法72条5項)、理由中の説示は朗読されるわけではない。
②処遇上の意見表明は、本来、処遇勧告によるべきであり、そのような実務が既に定着している。
③更生保護法の下においては、原決定の主文は、収容期間を定めたかのような誤解を招く⇒これを少年に告知した点には審判手続の違法があるといえる。

●少年保護事件の主文の誤りに関する裁判例:
「少年を初等少年院(一般短期)に処する。」という主文について、処遇勧告を主文ですべきでないと指摘しつつ、原決定を取り消す違法にまでは当たらないとしたもの。
「中等少年院に送致する」と言い渡した後、「初等少年院」と更正決定して決定書を作成した手続を違法としたもの。

判例時報2463

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