森友学園補助金詐欺事件
大阪地裁R2.2.19
<争点>
①補助金等不正受交付罪を定める補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法)29条1項(法定刑は懲役5年以下若しくは罰金100万円以下又は併科)は、詐欺罪を定める刑法246条1項の特別規定であって、欺罔行為による補助金等の詐取については補助金等不正受交付財が問われるべきとの弁護人の主張の当否
②サステナブル補助金事件における被告人両名の詐欺の故意及びK1(設計業者で森友学園代理人会社の取締役)との共謀の成否
③経常費補助金事件における被告人X2の詐欺の故意及び共謀の成否
④特別支援教育費事件における被告人X1の各欺罔行為の有無並びに被告人X2の格差偽の故意及び共謀の成否
<判断>
●争点①
①両罪は構成要件及び法定刑のいずれの面でも一方が他方を包摂する関係にない
②両罪の保護法益が同一でない
③補助金適正化法の対象とならない地方公共団体の補助金を詐取した場合に処罰内容に大きな不均衡が生じる
⇒弁護人の主張を排斥。
●争点②サステナブル補助金事件
サステナブル補助金事件における被告人両名の詐欺の故意及びK1との共謀の成否について
①資金が足りない分は補助金で補おうと考えていた被告両名が、K1に対して「国からぼったくる」などと本来より多額の補助金を得たいという趣旨の話しをしていたところ、K1から工事費額が少ないと補助金額も少なくなるなどといった補助金額決定の仕組の説明を受けてこれを理解したこと、その後、・・・工事代金額及び設計報酬額について当初の交付決定額どおりの補助金の作成に了承を与えたこと
②被告人両名は、・・・・K1の説明から、本来は、既に実施設計に着手しているため補助金を受給できないが、その着手時期を偽れば受給できる可能性があると知ったこと、その着手時期を偽った契約書に被告人X1が署名し、その際、被告人X2の同席したこと等
⇒被告人両名の詐欺の故意を認定できる。
・・・被告人両名がK1ら関係者の犯罪を手助けしたのではなく、事業主等として多額の補助金を得たいという強い意向を示したことから、K1ら関係者が補助金に関する実務を担当するものとしてやむなく手続をすす埋めたもの⇒被告人両名とK1との間に共謀が成立。
●争点③(経常費補助金事件):
いずれも認定できない⇒無罪。
●争点④(特別支援教育費事件)
被告人X1の各欺罔行為は認定できるが、
被告人X2については、一部について詐欺の故意は認定できるものの、被告人X1との間で不正受給についての意思連絡(共謀)は認定できない⇒無罪。
● 弁護人は、検察官は、首相(当時)の妻と親しくしていた被告任両名を標的として起訴するため、争点①で被告人両名と共謀したとされる設計業者の取締役K1を違法な司法取引により協力させた⇒控訴棄却及び関係証拠の違法収集証拠排除を求めたが、排除された。
⇒
被告人X1について懲役5年
被告人X2について懲役3年執行猶予5年
<解説>
補助金等不正受交付罪と詐欺罪の成否
A:前者は後者の特別規定⇒補助金等不正受交付罪が優先的に適用される
B:そのような関係にない
最高裁H21.9.15:
補助金等不正受交付罪の成立範囲については、詐欺罪の場合と異なる旨の判断。
判例時報2462
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