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2020年12月28日 (月)

建物明渡請求が弁護士法73条違反で、権利濫用とされた事例

熊本地裁H31.4.9

<事案>
Yの父Aから本件居室を買い受けたXが、本件居室に居住するYに対し、所有権に基づき本件居室の明渡し及び買受日から本件居室の明渡し済みまで月額13万円の賃料相当損害金の支払を求めた。

<判断>
Xは、平成14年に設立された不動産の売買、仲介等を目的とする会社。
Xは、これまでに、占有者の明渡しを実現すいた上で、当該不動産を転売する取引を約50回以上行っており、立退料を提示して明渡しを実現したことも約30回あった。
Xは、これらの明渡しをいずれも任意交渉で実現しており、訴訟や競売手続における引渡命令等の法的手段をとったことはなかった。
Xのこのような行為は、形式的には、他人の権利を譲り受けて訴訟等の手段によってその権利を実行することを業とする行為(弁護士法73条)であるところ、本件居室に買受けもその一環として行われたもの。
but
かかる行為によって、みだりに訴訟を誘発したり紛議を助長したりするおそれがない場合には、弁護士法73条に違反しないと解することができる。
Xの本件居室の買受けは、競売手続における買受けでないことはもとより、Aの債権者の権利行使に伴って行われたものでもなく、AとYとの間でYの本件居室の占有の継続すなわちYの占有権限の有無について紛争を生じたことに端を発して、Aの利益を図る目的で行われたもの

XによるAとの間の本件居室の買受けは、本件居室についてのYの占有権限の内容について何ら調査をすることなく行われたものであり、Yの法律生活上の利益に対する弊害が生じることが防止されているものとはいえない。

かかるXによるAとの間の本件居室の買受行為は、弁護士法73条に違反する行為の一環として行われたものと認めるのが相当。

①弁護士法73条に違反する行為によって国民の法律生活上の利益に対する弊害が生ずることを防止する公益上の要請は強く
②同条に違反する行為が刑事罰の対象とされている

同条に違反する行為の私法的効力は抑制的に解するのが相当。

本件売買契約が、AとXとの間において無効ではないとしても、Xが本件売買契約の結果取得した本件居室の所有権に基づき、本件請求を行うことは権利の濫用として認められない。

<解説>
弁護士法 第73条(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)
何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によつて、その権利の実行をすることを業とすることができない。

主として弁護士でない者が、権利の譲渡を受けることによって、みだりに訴訟を誘発したりするなどして、国民の法律生活上の利益縫い対する弊害が生じることを防止するところにある。

そのような弊害がない場合には、弁護士法73条違反に当たらない。
(最高裁H14.1.22)

判例時報2458

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