元妻が、元夫の意思を確認しないまま融解肺移植の方法により子を出産⇒元夫の自己決定権侵害
大阪地裁R2.3.12
<事案>
元妻であるY1との間で対外受精を行うことを合意し、医療法人Y2が開設し不妊治療を専門とするクリニックにおいて受精卵を凍結保存することにした夫である「Xが、Y1が別居中にXの意思を確認しないまま融解肺移植の方法により子を出産⇒自己決定権を侵害されたと主張して、Y1、Y2及びその理事長かつ本件クリニックの院長であるY3に対し、共同不法行為に基づき2000万円及び遅延損害金の支払を求めた。
<判断>
● ・・・・Xは、Y1が本件同意書2にXの署名をした平成27年4月20日時点において、本件移植に同意していなかったと認められ、Y1も同時点においてXが本件移植に同意していないことを認識していたか容易に認識し得たと認定
⇒Y1は、Xに対し、Y1との間で本件子をもうけるかどうかという自己決定権を侵害。
● Y2、Y3において、本件移植に際して、Xに対し、直接の意思確認をすべき義務はない⇒その責任を否定。
←
①本件同意書2のXの署名は、その体裁に照らし、Xの従前の署名と対比して異なることが容易に判明するものではない
②学会の見解においても、本件同意書2等の書式及び作成方法はこれに沿ったものであり、同意書への署名以外に、本人に直接電話をかけるのなどしてその同意を確認することまでを推奨していはおらず、本件のような取扱いが不妊治療についての医療水準として不相当なものとはいえない。
⇒
Y1に対し慰謝料・弁護士費用として880万円の支払を命じ、Y2、Y3に対する請求は棄却。
<解説>
保存された男性の精子を用いて当該男性の死亡後に行われた人工生殖により女性が懐胎し出産した子と当該男性との間に法律上の親子関係が形成されるか?
最高裁H18.9.4はこれを否定。
妻が第三者の精子を用いて人工授精して出産した子について、夫がその嫡出性承認したとは認められない(大阪地裁H10.12.18)。
生殖補助医療施術意思は、医療行為を受ける意思の一種⇒
①その意思が明確であること、
②生殖補助医療を実施する際に存在すること
が必要とされている。
判例時報2459
大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
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