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2020年12月 7日 (月)

精神保健指定医の指定取消処分につき、厚労大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があったとされた事例

東京地裁R1.9.12

<事案>
精神保健指定医の指定を受けていた医師Xが、厚生労働大臣から、本件指定を取り消す旨の処分を受けた⇒Y(国)を相手に、本件処分の取消しを求めた。

本件処分の理由:
Xが本件申請の際に、自ら担当として診断又は治療に十分関わりを持った症例とは認められない本件症例を対象として、不正な本件ケースレポートを作成して提出し、このことが精神福祉法19条の2第2項に規定する「指定医として著しく不適当と認められるとき」に該当する。

<Xの主張>
Xは、本件患者の診察に十分な関わりを持っていなかとは認められない⇒本件処分は、処分理由とされた事実の認定に誤認がある。

<判断>
Xは本件症例に係る診察について自ら担当として十分な関わりを持ったと認められる⇒本件ケースレポートの提出をもって精神福祉法19条の2第2項に規定する「指定医として著しく不適当と認められるとき」に該当するとして本件指定を取り消した本件処分は、厚生労働大臣の裁量判断の前提となる重要な事実の基礎を欠く⇒その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法⇒Xの請求を認容。

Xの本件症例へ関わりについて、Xは本件複数医体制の下、A医師及びB医師とともに本件症例に係る診療に関与したものであるところ、
①本件患者が本件病院に入院した間、勤務日(基本的に毎週月曜日~金曜日)毎に本件患者を診察し、
②他の2名の医師とともに本件患者の治療やリハビリの方針等について協議を行ったほか、看護師や本件患者の家族等を交えたリハビリテーションカンファレンスにも参加し、
③前記の医師間の協議の場において、抗精神病薬の投与等について具体的な提案をし、
④看護師がA医師と連絡を取れないときには代りにドクターコールを受けて対応し、
⑤髄膜種の再発が判明した際には、本件患者及びその家族に対し、その事実及び他病院での治療の必要性について説明し、
⑥診療情報提供書及び退院時要約の草稿を作成したことなどの事実を認定

これらの事実に照らせば、Xは、本件複数医体制の下で、指導医から指導を受ける立場の担当医に期待される役割を果たしており、本件症例について、自ら担当として十分な関わりを持ったものと認めるのが相当

<解説>
精神福祉法18条1項:
患者本人の意思にかかわらず入院を実施することができるなどの指定医の職務に鑑み、厚生労働大臣が、申請に基づき、3年以上精神障害の診断又は治療に従事した経験を有するなど所定の要件に該当する医師のうち、前記の職務を行うのに必要な知識及び技能を有すると認められる者を指定医に指定することとしている。
その要件の1つ:「厚生労働大臣が定める精神障害につき厚生労働大臣が定める程度の診断又は治療に従事した経験を有すること」(「診療経験要件」)

判例時報2456

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