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2020年12月20日 (日)

少年を第1種少年院に送致した原決定の処分は著しく不当⇒原決定が取り消された事例

東京高裁H30.12.20

<事案>
児童相談所に一時保護されていた少年が、児童相談所職員に対して、椅子をなげつけて身体にぶつけるなどの暴行を加え、全治約5日間の右前腕打撲等の傷害を負わせた。

<原決定>
・・・社会内処遇あるいは開放施設における改善指導は困難であって、少年院に収容して、厳格な枠組みの下における指導が必要。

<判断>
● ①本件非行対態様は、自分が座っていた椅子を投げつけるなどの比較的単純なものであり、執拗な暴行を加えたというものではない
無抵抗の被害者に一方的に暴行を加えた悪質な態様という評価は必ずしも相当とはいえない
全治約5日間という傷害結果は軽い部類に属する⇒これが軽いものではないという評価は明らかに相当ではない。
経緯や動機において本件非行を正当化するものとはいえないという説示もやや形式的な見方といえる。

本件非行は、直ちに施設収容による矯正教育の必要性を示すような重大なものではない

● 少年の問題行動の拡大のうち、他人への器物損壊、暴力行為という点は、児童相談所において一時保護中の少年の行状を指していると解される
but
①それらは、家族間のトラブルの延長という側面があると考えられる。
②それらの問題行動の状況について、調査・審判の過程で少年に確認をした形跡がない
③「放火行為」についても、家族間のトラブルの範疇にあるとみることができる上、少年は、トイレットペーパーロールの底をコンロの火に当てたが、自分で火を消したと供述するところ、これを否定するだけの事情はない。
④アルコールを撒いたという行為は危険であるが、少年が火をつけようとしたとは認められない。

通常の「放火行為」とは様相を異にしている
少年の問題性の深化という文脈で捉えるのであれば、その詳細を明らかにするなど検討が必要
but
調査・審判の過程にでこの点が意識されていたとは認められない。

他方で、
学校やアルバイト先での様子⇒少年の問題行動の範囲は限定されていたと評価する余地がある。

● 児童相談所の指導が有効な歯止めとなっていないという点
vs.
児童相談所で特段の指導が行われたようにはうかがわれず、その説示は相当ではない。
少年に対して、適切な医療的措置が施されて服薬が励行されれば、相応に問題性の改善が見られる可能性は高い
but
調査・審判の過程で、そのような医療的措置を含む社会内処遇等の可能性が具体的に検討されたようには見受けられない

● 保護観察については、現時点で、実母や継父において、少年の特性を踏まえた指導や監督をしていくことは困難であるが、実母の態度に変化が見られていたのに、面会の際のやりとりや、それを踏まえた気持ちなどについて、審判において、少年及び実母に確認した形跡はない
そして、本件非行の程度等に照らすと、これまで少年に対し、障害や性格の特性に合わせた指導が行われたことはない⇒施設収容による矯正教育以外の処遇は困難であることの見極めが必要である。

原決定は、少年の問題性ないし要保護性に関する基礎事情を十分明らかにしていなかったり、これらを一面的に評価ているところがあり、それに伴って、施設収容による矯正教育以外の処遇が困難であることの見極めを十分にしていないと言わざるを得ない。

このような調査・審判の過程により、少年を第1種少年院に送致した原決定の処分は著しく不当

<解説>
保護処分の要否及びその種別の選択においては、非行事実及び要保護性を基礎付ける事情の評価が重要
本決定:原決定のそれらの評価の問題点を具体的に示しており参考になる。

要保護性を基礎付ける事情については、それが処分選択上重要であるならば十分な調査が必要となるところ、
本決定は、その重要性と調査の必要性を具体的に示している。

判例時報2457

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