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2020年11月12日 (木)

生活保護費徴収決定に係る通知書の記載が、行手法14条1項本文の理由の提示として不十分とされた事例

名古屋地裁H31.1.31

<事案>
生活保護法による保護を受けていたXが、X名義の預金口座への入金及びX名義で行われたFX取引により生じた利益を収入として申告しなかった⇒不実の申請その他不正な手段により保護費を受給⇒生活保護法78条に基づき、4回にわたり支給済みの保護費の徴収決定を受けた⇒Y(名古屋市)に対し、それらの取消しを求めた。

<主張>
X:
①一部の徴収決定に係る通知書における理由の記載について、「保護受給開始後から収入はないと申告を受けていたが、口座に振り込みを見つけ、申告が虚偽であることが判明」としか記載がなく、入金のあった預金口座や入金の年月日の記載がない⇒理由の提示として不十分⇒行手法14条1項本文に違反し、違法。
②X名義の預金口座への入金及びX名義で行われたFX取引により生じた利益はそもそも申告すべき収入に該当せず、仮に申告すべき収入に該当するとしても、これらを申告しなかったのは、その存在を隠蔽する意図があったからではなく、Xは不実の申請その他不正な手段により保護を受給したとはいえない
⇒生活保護法78条に基づく各徴収決定は違法。

<主な争点>
①生活保護費徴収決定に係る通知書の記載について、行手法14条1項本文の理由の提示として十分であるか
②Xが、生活保護法78条にいう「不実の申請その他不正な手段」 により保護を受給したか否か

<判断>
●争点①
Xは、入金のあった預金口座以外にも複数の預貯金口座を保有し、複数回にわたり取引を行っていた⇒通知書における理由の記載について、金融機関名、入金の年月日、振込金額等が具体的に記載されなければ、Xにおいて、どの預金口座へのどの入金を収入として申告しなかったことが処分の理由とされているかを理解することは困難⇒単に預金口座への入金があったというだけでは、行手法14条1項本文の要求する理由の提示として不十分⇒一部の徴収決定に係る通知書の記載について、行手法14条1項本文に違反し、違法。

本件処分1は、理由の提示を欠いた違法な処分として、取り消されるべきである。

●争点②
被保護者が、その最低限度の生活を維持するために活用することができる一切の財産的価値を有するものご申告すべき収入に当たる。
生活保護法78条にいう「不実の申請その他不正な手段」とは、積極的に虚偽の事実を申告することのみならず、本来申告すべき事実を隠匿することも含まれ、申告について口頭又は文書による指示を受けたにもかかわらず、これに応じなかったときも含まれる
X名義の預金口座への入金については、Xの利用可能な資産が増加するものと認められる⇒収入認定の対象とすべき資産に該当するところ、
Xは、収入申告の義務があることを知りながら、預金口座の存在を申告しなかったうえ、入金の事実について申告をしなかったり、入金の事実について説明を求められたにもかかわらず説明をsいなかった点において、不実の申告その他不正な手段により保護を受けたということができる。

徴収決定は適法

X名義で行われたFX取引により生じた利益について・・・・不実の申告その他不正な手段により保護を受けたということができる。

徴収決定は適法。

<解説>
行手法14条1項は、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとする。
その趣旨は、
行政庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制する
処分の相手方の不服申立ての便宜を図る

判例時報2454

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