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2020年9月10日 (木)

13歳の少年について、第1種少年院に送致した事例

東京家裁R1.9.12

<事案>
当時13歳の少年が、覚せい剤及び大麻を友人と共に密売人から譲り受け、これを単独で所持。

<判断>
少年の薬物使用歴や使用状況、交友関係や学校等での生活状況などを詳細に認定⇒事案の重大性や少年の薬物への依存性の深刻さ、資質及び行動傾向上の問題の根深さとその改善の困難さ、保護関係などを分析評価

少年が現在13歳であり、これまで保護処分歴がないことや、本件を受けての保護者の指導監護に向けた意欲の高まりなどを考慮しても、少年に対しては、系統的で強固な枠組みの下、時間をかけてその資質面の問題に即した地道な指導を行うことにより、薬物との断絶を果たすと共に、健全な対人関係を形成する能力や社会性、規範意識を身に付けさせることが必要不可欠であり、少年を少年院に収容することが特に必要。

<解説>
●14歳に満たない年少少年は、環境的な要因の影響を受けやすく、そのため非行に及んでしまったりする一方、
情操保護の必要性が高い

少年法は、非行に及んだ年少少年については、より開放的で福祉的な児童福祉機関の措置に委ね、同機関が相当と判断した場合に限って家裁の審判に付することが出来るという児童福祉機関先議の原則(少年法3条2項、児福法27条1項4号)。
従前の少年院法2条は、こうした児童福祉機関先議の原則の理念⇒初等少年院及び医療少年院の収容可能年齢を14歳以上と定めていた
⇒触法少年及びぐ犯少年で処遇決定時14歳未満の者に関しては、前記各少年院に送致することはできなかった。
vs.
(1)14歳未満であっても、性格に深刻・複雑な問題があり、それが原因で殺人等の凶悪重大な非行に及んだ少年や、年少の頃から非行を繰り返し、何度施設に入所してもなお非行に及ぶなど非行性の極めて進んだ少年等、深刻な問題を抱える者に対しては、早期に矯正教育を施すことが、本人の改善更生を図るうえで必要かつ相当と認められる場合がある。
(2)解放処遇を原則として、家庭的な雰囲気の中で生活指導を行う児童福祉施設では、
①無断外出を繰り返したり
②暴力的な言動を行なったり
③医療的措置が必要であるなど、対応が困難と考えられる場合もある。

平成19年の少年法等の一部改正により、少年院法が改正され、
少年院に収容することができる者の年齢が「おおむね12歳以上」に引下げられる(少年院法4条1項)と共に、
「決定の時に14歳に満たない少年に係る事件については、特に必要と認める場合に限り、第3号の保護処分をすることができる」という少年法24条1項ただし書が新たに加えられた。

●本決定は、明示的に指摘してはいないものの、
児童自立支援施設等では薬物依存に対応した処遇を十分になしえず、
医療的措置の必要性あるいは薬物離脱に向けた専門的処遇の必要性をも重視したもの。

判例時報2447

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