駅の改札口において、駅員に対して不満を述べていた被告人が脅迫罪で起訴⇒無罪の事案。
東京地裁立川支部H30.5.7
<事案>
駅の改札口において、駅員に対して不満を述べていた被告人が脅迫罪で起訴⇒無罪の事案。
<争点>
被告人が、駅員に対して、着衣んの袖をまくり上げるなどして腕の入れ墨を見せつけ「なんでこの野郎」と怒鳴りながら、足で駅員の身体を蹴りつける仕草をするなどの行為の有無。
<判断・解説>
●防犯カメラの検討
まず防犯カメラの映像を十分検討するところから始めている。
⇒
見せつけ行為も蹴りつけ行為も、映像上認めることはできない。
●関係者の供述の信用性
検察官が立証の柱としていた駅員と警察官(P2)の各証人尋問は2回行われた。
それぞれ1回目の証言内容が防犯カメラの映像と齟齬⇒再尋問⇒供述の信用性にかなり致命的な打撃。
駅員:
1回目は訴因に沿うような証言。
2回目:見せつけ行為について、現行犯逮捕した警察官のもう1名(P1)の事件後ほどなく実施された被害再現捜査の際の言動から、警察官P1がいうのならそのとおりであろうと思って1回目の証言をした。
⇒2回目の被告人の行為に関する証言もP1の言動に影響されている可能性が相当程度あると判断。
蹴りつけ行為についても、1回目の証言内容はP1の再現したものと同じ⇒P1言動の影響は否定できない。
P2:
1回目の尋問では、見せつけ行為及び蹴りつけ行為を具体的に証言していながら、
それが防犯カメラ映像と齟齬することが明らかになった後に実施された2回目の尋問では、見せつけ行為も蹴りつけ行為も見ておらず、自分が見ていた場面と他の警察官から聞いた話を混同したと思うと証言。
⇒
訴因を認めるための証拠とはなり得ない。
P1の証言は、警察官として現場に臨場して状況をうかがった上で被告人を現行犯逮捕⇒逮捕の理由たる被疑事実について正確に認識しているはず
but
事件当日における認識dえすら被告人の見せつけ行為の場面に関し、防犯カメラ映像と齟齬
⇒
他の点についても、状況を正確に把握していたといえるか疑問であるとして信用性を否定。
●検察官が立証の柱としていた証人2人が、1度は自らの記憶ではない可能性を認識しつつ、事実と異なることを平然と証言していた。
ある者の認識や証言が、他の関係者に不当な影響を与え得ることはつとに指摘されている。
判例時報2445
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