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2020年7月12日 (日)

特殊詐欺の事案で、共謀の内容が詐欺と窃盗にわたるものと認定できる⇒共犯者は窃盗の責任も負うとされた事案

東京高裁H31.4.2

<事案>
被害者が現金の交付を受けて騙取することを企図したいわゆる特殊詐欺の事案において、受け子が、被害者が玄関に置いてあった現金を、交付を待たずに持ち去った⇒受け子から依頼されて運転手役を務めた被告人が、他に罪に問われた5件の特殊詐欺の事案と同様に、詐欺罪に問われた。

<1審>
公訴事実が争われず、その通りの詐欺罪の成立が認められた。
量刑不当で控訴

<判断>
職権で1審判決を破棄し、予備的訴因として追加された詐欺未遂罪と窃盗罪の成立を認めた。

<解説>
●詐欺罪の実行の着手
詐欺罪の実行行為である「人を欺く」行為は、交付の判断の基礎となる重要な事実を偽ること。
本件:被害者の貯金が無断で引き出されるおそれがあるため、これを保全する必要があるなどと申し向けて、被害者に貯金口座から現金を引き出させるなど交付行為の準備をさせる行為を行わせている⇒詐欺罪の実行の着手あり。

●受け子の犯罪
受け子は、交付を受けることなく無断で持ち去っている⇒窃盗罪が成立。
詐欺罪は未遂。
同一法益の侵害に向けられた密接な関係⇒包括一罪

●共犯者の窃盗の故意・共謀
構成要件的故意が認められるためには、犯罪事実の表象が必要(通説・判例)。
but
これは、犯罪事実の発生が不確実であると考えた場合であってもよく、また、明確な認識・予見があったことを要しない。

本件:
結局、欺く行為の相手である被害者から、現金を手に入れることこそが目的であると考えられ、交付を受けるという企図どおりの方法しか許容しない趣旨であったとは考え難い
特殊詐欺は、交付という被害者の行為いかんにかかる部分もある⇒被告人を含む受け子が状況によっては被害者に気付かれないうちに盗取することを十分に想定できる。

窃盗についても認識・予見があったと評価し得る
共犯者である被告人についても、窃盗罪の故意に欠けるところはなく、当初の共謀の範囲が両罪にわたるとの認定は十分に考えられる

判例時報2442

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