強姦及び強制わいせつの犯行の様子を隠し撮りしたデジタルビデオカセットと刑法19条1項2号の「犯罪行為の用に供したもの」
最高裁H30.6.26
<事案>
アロマサロンを開業し、自ら施術者として利用客にマッサージ等のサービスを提供した被告人による、アロマに関する指導を受けるなどしていた女性に対する強姦未遂1件、強姦1件、強制わいせつ3件の事案。
各犯罪の成否のほか、各犯行の様子を隠し撮りしたデジタルビデオカセット合計4本について、その没収の可否が争われた。
<規定>
刑法 第一九条(没収)
次に掲げる物は、没収することができる。
一 犯罪行為を組成した物
二 犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物
三 犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物
四 前号に掲げる物の対価として得た物
2没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる。
<判断>
デジタルビデオカセットが、本件事実関係の下において、刑法19条1項2号にいう「犯罪行為の用に供した物」に当たるとした。
<解説>
●どのような範囲の物が犯罪供用物件に該当するのか?
×A:限定説
B:密接関連校異説
<事案>
アロマサロンを開業し、自ら施術者として利用客にマッサージ等のサービスを提供した被告人による、アロマに関する指導を受けるなどしていた女性に対する強姦未遂1件、強姦1件、強制わいせつ3件の事案。
各犯罪の成否のほか、各犯行の様子を隠し撮りしたデジタルビデオカセット合計4本について、その没収の可否が争われた。
<規定>
刑法 第一九条(没収)
次に掲げる物は、没収することができる。
一 犯罪行為を組成した物
二 犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物
三 犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物
四 前号に掲げる物の対価として得た物
2没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる。
<判断>
デジタルビデオカセットが、本件事実関係の下において、刑法19条1項2号にいう「犯罪行為の用に供した物」に当たるとした。
<解説>
●どのような範囲の物が犯罪供用物件に該当するのか?
×A:限定説
B:密接関連校異説
C:促進説:
同号にいう「犯罪行為」は、構成要件該当行為に限られるとした上で、「用に供し、又は供しようとした物」には、構成要件該当行為それ自体に使用し、又は使用しようとした物のほか、構成要件該当行為の遂行を促進したという意味において、幇助犯と類似の関係にあり、幇助の因果性に関する議論と同様の考え方に基づき、附加刑として没収されると理解。
同号にいう「犯罪行為」は、構成要件該当行為に限られるとした上で、「用に供し、又は供しようとした物」には、構成要件該当行為それ自体に使用し、又は使用しようとした物のほか、構成要件該当行為の遂行を促進したという意味において、幇助犯と類似の関係にあり、幇助の因果性に関する議論と同様の考え方に基づき、附加刑として没収されると理解。
性犯罪は、被害者にとって被害を受けたことを他人に知られたくない犯罪
⇒
行為者からすると、犯行の様子を撮影録画することは、被害者にその事実を知らせて捜査機関に行為者の処罰を求めることを断念させ刑事責任の追及を免れるための有効な手段を確保することになり、その意味において、犯行に及ぶ心理的障害を除去ないし軽減する効果を有するもの。
●本決定:
その摘示する事実関係からすると、
①本件が以上のような性質を有する性犯罪の事案であり、その犯行の様子を撮影しデジタルビデオカセットに録画することには実行行為に対して前記のような促進効果がある
②被告人が隠し撮りをしたのはそのような効果を意図したもの
⇒
促進説に近い考え方に依拠して、本件デジタルビデオカセットは「犯行の用に供した物」に当たるとしたものと解される。
●促進説が幇助の因果性に関する議論と同様の考え方に基づいている⇒犯罪供用物件は、実行行為の終了までに、実行行為を促進するようにその用に供し、又は供しようとしたが、現実にはその用に供しなかった物をいう。
本件デジタルビデオカセットは、犯行の様子が録画されることに実行行為に対する促進効果が認められる⇒犯行の様子が録画されることによって実行行為の終了前にその用に供されたと理解することができる。
本件デジタルビデオカセットは、犯行の様子が録画されることに実行行為に対する促進効果が認められる⇒犯行の様子が録画されることによって実行行為の終了前にその用に供されたと理解することができる。
判例時報2437
| 固定リンク
« 高校教師の指導⇒生徒自殺での国賠請求(指導について否定) | トップページ | ①準強制性交等被告事件 名古屋地裁岡崎支部H31.3.26 ②矯正性交等致傷被告事件 静岡地裁浜松支部H31.3.19 »
「判例」カテゴリの記事
- 保護観察中の特定少年の特殊詐欺の受け子としてのキャッシュカード窃取で第1種少年院送致(期間3年)の事案(2023.06.06)
- 社債の私募の取扱いをした証券会社の損害賠償義務(肯定)(2023.06.06)
- (脚本の)映画試写会での公表(否定)とその後の週刊誌での掲載による公表権の侵害(肯定)(2023.06.04)
- いじめで教諭らと市教育委員会の対応が国賠法上違法とされた事案(2023.06.04)
- 破産申立代理人の財産散逸防止義務違反(否定)(2023.06.01)
「刑事」カテゴリの記事
- 保護観察中の特定少年の特殊詐欺の受け子としてのキャッシュカード窃取で第1種少年院送致(期間3年)の事案(2023.06.06)
- 詐欺未遂ほう助保護事件で少年を第一種少年院に送致・収容期間2年の事案(2023.05.07)
- 不正競争防止法2条1項10号の「技術的制限手段の効果を妨げる」の意味(2023.05.01)
- 保釈保証金の全額没収の事案(2023.04.02)
- 管轄移転の請求が訴訟を遅延する目的のみでされた⇒刑訴規則6条による訴訟手続停止の要否(否定)(2023.04.02)
コメント