①準強制性交等被告事件 名古屋地裁岡崎支部H31.3.26 ②矯正性交等致傷被告事件 静岡地裁浜松支部H31.3.19
<①事件>
<事案>
被告人が、同居の実子Aがかねてより被告人による暴力や性的虐待等により被告人に抵抗できない精神状態生活していて抗拒不能の状態に陥っていることに乗じてAと性交⇒2件の準強制性交罪。
<判断>
事実認定:
①Aは、実父である被告人、実母及び実弟と同居していたところ、小、中学生時代より被告人から暴力を振るわれたことがあり、その際実母は制止することがなかった。
②被告人は、Aが中学2年生の頃からAと性交を行うようになり・・・Aは抵抗していたが、その程度は次第に弱まって行った。
③Aは、弟らに被告人からの性的虐待を打ち明けて相談し、弟らと同じ部屋で寝るようにした⇒被告人からの性向がしばらく止んだ時期があった。
④Aは、本件事件の少し前頃、被告人から性交されそうになって抵抗した際、ふくらはぎに痣ができるほどの暴行を受けたことがあった。
⑤その後本件事件が発生したが、Aはその前後にわたり友人らに性的被害の相談をし、・・・発覚した。
・・・・本件性交がAにとって極めて受け入れがたい性的虐待に当たるとしても、これに際し、Aは抗拒不能の状態にあったと認定するには疑いが残る
<規定>
刑法 第一七八条(準強制わいせつ及び準強制性交等)
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。
●心理的抗拒不能状態をどのような基準で判断するか?
抗拒不能の判断を客観的な基準で行うのではなく、その事件の被害者に即してその際の心理や精神状態を基準に判断すべき(通説判例)。
●具体的にどの程度の抗拒困難性があれば抗拒不能と認められるか?
本判決:
「被告人がAの人格を完全に支配し、Aが被告人に服従・盲従せざるを得ないような強い支配従属関係」が認められることが必要。
<事案>
被告人が、同居の実子Aがかねてより被告人による暴力や性的虐待等により被告人に抵抗できない精神状態生活していて抗拒不能の状態に陥っていることに乗じてAと性交⇒2件の準強制性交罪。
<判断>
事実認定:
①Aは、実父である被告人、実母及び実弟と同居していたところ、小、中学生時代より被告人から暴力を振るわれたことがあり、その際実母は制止することがなかった。
②被告人は、Aが中学2年生の頃からAと性交を行うようになり・・・Aは抵抗していたが、その程度は次第に弱まって行った。
③Aは、弟らに被告人からの性的虐待を打ち明けて相談し、弟らと同じ部屋で寝るようにした⇒被告人からの性向がしばらく止んだ時期があった。
④Aは、本件事件の少し前頃、被告人から性交されそうになって抵抗した際、ふくらはぎに痣ができるほどの暴行を受けたことがあった。
⑤その後本件事件が発生したが、Aはその前後にわたり友人らに性的被害の相談をし、・・・発覚した。
・・・・本件性交がAにとって極めて受け入れがたい性的虐待に当たるとしても、これに際し、Aは抗拒不能の状態にあったと認定するには疑いが残る
<規定>
刑法 第一七八条(準強制わいせつ及び準強制性交等)
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。
●心理的抗拒不能状態をどのような基準で判断するか?
抗拒不能の判断を客観的な基準で行うのではなく、その事件の被害者に即してその際の心理や精神状態を基準に判断すべき(通説判例)。
●具体的にどの程度の抗拒困難性があれば抗拒不能と認められるか?
本判決:
「被告人がAの人格を完全に支配し、Aが被告人に服従・盲従せざるを得ないような強い支配従属関係」が認められることが必要。
日常生活における被告人に対するAの独自の判断・行動の存在や性交回避の体験等の存在⇒抗拒不能状態に至ったとの認定には合理的疑いが残る。
刑法178条2項:
意に反する性交の全てを準強制性交等罪として処罰しているものではなく、
暴行又は脅迫を手段とする場合と同程度に相手方の性的自由を侵害した場合に限って同罪の成立を認めている。
⇒「抗拒不能」の程度は相当に高度であることが必要。
意に反する性交の全てを準強制性交等罪として処罰しているものではなく、
暴行又は脅迫を手段とする場合と同程度に相手方の性的自由を侵害した場合に限って同罪の成立を認めている。
⇒「抗拒不能」の程度は相当に高度であることが必要。
完全な抗拒不能であることは必要でなく、反抗が著しく困難な状態を指すとするのが通説的な見解。
<②事件>
①事件と同様「抗拒不能」の認定と故意が争われた事例。
被告人の暴行によって被害者が頭が真っ白になって拒否できない状態になった点を「抗拒不能」と認定。
but
被告人において、被害者のそのような抗拒不能の状態を認識していたとは認められない⇒無罪。
<②事件>
①事件と同様「抗拒不能」の認定と故意が争われた事例。
被告人の暴行によって被害者が頭が真っ白になって拒否できない状態になった点を「抗拒不能」と認定。
but
被告人において、被害者のそのような抗拒不能の状態を認識していたとは認められない⇒無罪。
判例時報2437
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