国有地の払下げに係る売買契約書に記載された売買代金額・瑕疵担保責任免除特約条項を不開示情報と判断⇒国賠法上違法とされた事案
大阪高裁R1.12.17
<事案>
国と森友学園間の国有財産である土地売買に係る売買契約につき、控訴人がした行政情報公開法に基づく開示請求⇒財務省近畿財務局長が一部不開示とする決定⇒国賠請求
控訴人が開示すべきとしたもの
①本件土地の売買代金額又はこれを推知させる部分
②土壌汚染や地下埋設物に関する瑕疵担保責任を免除する特約が記載された売買契約書42条部分(「本件条項」)
<争点>
①本件売買代金額等を本件条項が行政情報公開法5条2号イ所定の不開示情報に該当するといえるか
②近畿財務局長がこれを開示しなかったことが国賠法上違法といえるか
<判断>
●本件売買代金額等
原判決:
国有財産の適切な管理を求める財政法9条1項の趣旨に照らし、国有財産の譲渡価格の客観性を確保する基本的要請から公表されるべき情報
⇒行政情報公開法の定める不開示情報には該当せず、近畿財務局長は、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件売買代金額を不開示とする判断をした⇒国賠法上違法。
本判決も同様。
●本件条項
原判決:
国賠法上違法であるとは認められない。
判断:
①本件条項は、売買代金の大幅な減価要因を記載した条項⇒財政法9条1項の趣旨に照らせば、売買代金額と同等かそれ以上に重要な情報であって、開示すべき要請は高い。
②本件条項を開示すると保護者が学校敷地の土壌汚染等に対する心理的嫌悪感を抱き森友学園の事業運営上の利益が害されるおそれがあるというのは一般的・抽象的な可能性にとどまる。
⇒
本件条項は、本件売買代金額等と同様に、行政情報公開法の定める不開示情報には該当しない。
<事案>
国と森友学園間の国有財産である土地売買に係る売買契約につき、控訴人がした行政情報公開法に基づく開示請求⇒財務省近畿財務局長が一部不開示とする決定⇒国賠請求
控訴人が開示すべきとしたもの
①本件土地の売買代金額又はこれを推知させる部分
②土壌汚染や地下埋設物に関する瑕疵担保責任を免除する特約が記載された売買契約書42条部分(「本件条項」)
<争点>
①本件売買代金額等を本件条項が行政情報公開法5条2号イ所定の不開示情報に該当するといえるか
②近畿財務局長がこれを開示しなかったことが国賠法上違法といえるか
<判断>
●本件売買代金額等
原判決:
国有財産の適切な管理を求める財政法9条1項の趣旨に照らし、国有財産の譲渡価格の客観性を確保する基本的要請から公表されるべき情報
⇒行政情報公開法の定める不開示情報には該当せず、近畿財務局長は、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件売買代金額を不開示とする判断をした⇒国賠法上違法。
本判決も同様。
●本件条項
原判決:
国賠法上違法であるとは認められない。
判断:
①本件条項は、売買代金の大幅な減価要因を記載した条項⇒財政法9条1項の趣旨に照らせば、売買代金額と同等かそれ以上に重要な情報であって、開示すべき要請は高い。
②本件条項を開示すると保護者が学校敷地の土壌汚染等に対する心理的嫌悪感を抱き森友学園の事業運営上の利益が害されるおそれがあるというのは一般的・抽象的な可能性にとどまる。
⇒
本件条項は、本件売買代金額等と同様に、行政情報公開法の定める不開示情報には該当しない。
近畿財務局長は、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件条項を不開示とする判断をした⇒国賠法上違法。
<解説>
●不開示情報(利益侵害情報)
行政情報公開法5条2号イ所定の不開示情報(利益侵害情報)に該当するというためには、
法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を「害するおそれがある」ことが要件となる。
but
これは、個別具体的な事案において、当該情報の性質、内容、法人等の性格、事業内容、事業活動において当該情報が有する意味、権利利益の内容等の諸般の事情を総合勘案して判断。
利益侵害情報該当性の判断に当たっては、単なる確率的な可能性では足りず、法的保護に値する蓋然性が求められる。
最高裁も、前記諸般の事情を総合勘案して、利益が害される蓋然性が客観的に認められるかどうかを重視しているものと解される。
●国賠請求
公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と不開示決定をしたと認め得るような事情が必要。
●行政情報公開法5条2号イに係る裁判例について、
<解説>
●不開示情報(利益侵害情報)
行政情報公開法5条2号イ所定の不開示情報(利益侵害情報)に該当するというためには、
法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を「害するおそれがある」ことが要件となる。
but
これは、個別具体的な事案において、当該情報の性質、内容、法人等の性格、事業内容、事業活動において当該情報が有する意味、権利利益の内容等の諸般の事情を総合勘案して判断。
利益侵害情報該当性の判断に当たっては、単なる確率的な可能性では足りず、法的保護に値する蓋然性が求められる。
最高裁も、前記諸般の事情を総合勘案して、利益が害される蓋然性が客観的に認められるかどうかを重視しているものと解される。
●国賠請求
公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と不開示決定をしたと認め得るような事情が必要。
●行政情報公開法5条2号イに係る裁判例について、
不開示情報該当と判断したもの:
・省エネルギー法に係る工場の数値情報
・労働基準監督署長が保有する労災補償支給決定に際し作成された処理経過簿記載の事業所名
等
・省エネルギー法に係る工場の数値情報
・労働基準監督署長が保有する労災補償支給決定に際し作成された処理経過簿記載の事業所名
等
不開示情報非該当と判断したもの:
・消費者庁の景表法上の調査過程で行われた監査法人への質問、回答文書
森友学園が作成した市立小学校の設置趣意書の表題の一部(小学校名)及び本文部分が、行政情報公開法5条2号イ所定の不開示情報に該当しないとされ、国賠請求が認められたものとして、大阪地裁(判例時報2411号)
・消費者庁の景表法上の調査過程で行われた監査法人への質問、回答文書
森友学園が作成した市立小学校の設置趣意書の表題の一部(小学校名)及び本文部分が、行政情報公開法5条2号イ所定の不開示情報に該当しないとされ、国賠請求が認められたものとして、大阪地裁(判例時報2411号)
判例時報2438
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