被告人の記名のみがあり署名押印がない控訴申立書による(刑事)控訴申立ての効力(無効)
最高裁R1.12.10
<規定>
刑訴規則第六〇条(公務員以外の者の書類)
官吏その他の公務員以外の者が作るべき書類には、年月日を記載して署名押印しなければならない。
<判断>
被告人の記名のみがあり署名押印がいずれもない控訴申立書による控訴申立ては、同申立書を封入した郵便の封筒に被告人署名があったとしても、無効と解すべきである。
<解説>
● 刑訴規則60条が申立書等の書類に署名押印を要求
←
①申立書等の記載自体から何人が作成者であるか、換言すれば、当該書面による訴訟行為の主体を明確にさせる。
②当該書面が作成者本人の意思に基づき真正に作成されたか否かを確認する手立てとする。
処理の作成方式に瑕疵がある場合の効力:
刑訴規則60条に違反することを理由に一律に無効とするものは見当たらず、当該書類の性質(個々の訴訟行為の性質)、作成方式の瑕疵の程度等により、その効力を判断すべきものとされている。
● 最高裁判例:
・記名代印によって作成された忌避申立書等の書類につき、法律上無効としたもの。
・電子複写機によって複写されたコピーであって、作成名義人たる外国人である被告人の署名がない控訴申立書による控訴申立てにつき、同書面中に被告人の署名が複写されていたとしても、無効としたもの。
・電子複写機によって複写されたコピーであって作成名義人の署名押印のない上告趣意書につき、有効な上告趣意書として判断の対象とするのが相当であるとしたもの。
判例時報2441
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