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2020年5月17日 (日)

参議院議員の議員定数配分規定の合憲性(合憲)

福岡高裁宮崎支部R1.10.30       
 
<事案>
令和1年7月21日施行の参議院議員通常選挙について、宮崎県選挙区と鹿児島県選挙区の選挙人である原告らが、公選法14条1項、別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定は憲法に違反して無効⇒これに基づき施行された本件選挙の前記各選挙区における選挙も無効
公選法204条に基づいて提起した選挙無効訴訟 
 
<判断>
憲法に違反しない⇒請求棄却。 

憲法は、選挙権の内容の平等すなわち投票価値の平等を要求しているが、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させるための選挙制度の仕組みの決定を国会の裁量に委ねている⇒投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的や理由との関連において調和的に実現されるべき

憲法が、国会の構成について二院制を採用した趣旨⇒参議院議員につき衆議院議員とは異なる選挙制度の仕組みを定め、参議院に衆議院と異なる独自の機能を発揮させることも、投票価値の平等の要請との調和が保たれる限りにおいて、国会の裁量権の範囲を逸脱するものではない

人口変動の結果により投票価値の著しい不平等状態が生じ、かつ、それが相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが、国会の裁量権の限界を超えると判断される場合には、当該定数配分規定は憲法に違反すると解するのが相当。

現在の衆議院議員及び参議院議員の各選挙制度は同質的になっている⇒衆議院と同様、参議院についても、最大格差を2倍未満に近づける方向での選挙制度の仕組みの見直しが不断に行われることが期待される。
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憲法が、参議院には国民の利害や意見を安定的に国会に反映させる機能を持たせようとしている⇒参議院についての投票価値の平等の要請に対する制度的な配慮は、必ずしも衆議院と同一のものである必要はなく、選挙制度の目的に照らして合理的なものである限り、国会の裁量に委ねられる。
・・・本件選挙当時の定数配分規定の下での投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたとはいえない。
 
<解説>
最高裁:
(1)最大格差が5.26倍の昭和52年製鋸につき、国会に委ねられた裁量権の合理的な行使の範囲を逸脱するものではない
(2)平成22年選挙につき、都道府県を政治的に1つのまとまりを有する単位として捉え得ること等の事情は数十年にもわたり5倍前後の投票価値の大きな格差が継続することを正当化する理由としては十分なものではない
(3)都道府県を単位とする選挙制度の仕組みを維持して一部の選挙区の定数を増減するにとどめた平成24年改正法により最大格差が4.77倍であった平成25年選挙における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生じる程度の著しい不平等状態にあった⇒都道府県を単位として選挙区の定数を設定する方式をしかるべき形に改めるなどの選挙制度の仕組み自体の見直しが必要。
(4)選挙区を定めるに当たり都道府県という単位を用いること自体を不合理で許されないものとしたものではない。参議院の創設以来初めて合区を採用し、最大格差を約3倍に縮小した平成27年改正法による定数配分規定は憲法に違反するものではない。
判例時報2436

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