2019年参院選投票価値較差訴訟高松高裁判決
高松高裁R1.10.16
<事案>
令和1年7月21日に施行された参議院議員通常選挙について、公選法14条1項、別表第3の選挙区及び議員定数の規定は憲法に違反し無効⇒本件選挙のうち各選挙区における選挙をそれぞれ無効とすることを求めた選挙無効訴訟。
<解説>
最高裁H29.9.27(平成29年大法廷判決):
公選法の平成27年改正法につき、
同法は、従前の改正のように単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、人口の少ない選挙区について、参議院の創設以来初めての合区を行うことにより、都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを見直すことをも内容とするものであり、これによって平成25年選挙当時まで数十年間にもわたり5倍前後で推移していた選挙区間の最大格差は2.97倍にまで縮小。
・・・・
同改正は、前記の参議院議員選挙の特性を踏まえ、平成24年大法廷判決及び平成26年大法廷判決の趣旨に沿って格差の是正を図ったものとみることができる。
令和1年7月21日に施行された参議院議員通常選挙について、公選法14条1項、別表第3の選挙区及び議員定数の規定は憲法に違反し無効⇒本件選挙のうち各選挙区における選挙をそれぞれ無効とすることを求めた選挙無効訴訟。
<解説>
最高裁H29.9.27(平成29年大法廷判決):
公選法の平成27年改正法につき、
同法は、従前の改正のように単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、人口の少ない選挙区について、参議院の創設以来初めての合区を行うことにより、都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを見直すことをも内容とするものであり、これによって平成25年選挙当時まで数十年間にもわたり5倍前後で推移していた選挙区間の最大格差は2.97倍にまで縮小。
・・・・
同改正は、前記の参議院議員選挙の特性を踏まえ、平成24年大法廷判決及び平成26年大法廷判決の趣旨に沿って格差の是正を図ったものとみることができる。
平成27年改正法は、その附則において、次回の通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得る旨規定
~
今後における投票価値の格差の更なる是正に向けての方向性と立法府の決意が示されるとともに、再び上記のような大きな格差を生じさせることのないよう配慮されている。
・・・
⇒
平成28年選挙当時、平成27年改正後の定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず、同定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない。
平成28年選挙後の平成29年2月、参議院の組織及び運営に関する諸問題を調査検討するため、各会派代表による「参議院改革協議会」が設置、同年4月、同協議会の下に、「選挙制度に関する専門委員会」が設置。
⇒平成30年改正法が成立。
参議院選挙に係る定数配分規定の合憲性:
最高裁昭和58.4.27:
①当該配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡が違憲の問題を生ずる程度の著しい不平等状態(いわゆる違憲状態)に至っているか
②当該選挙までの期間内に当該不均衡の是正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超えるか否か
の各観点から検討するという基本的な判断枠組みを示した。
but
平成29年大法廷判決:
前記②の判断において考慮するのではなく、
前記①の判断において考慮し、
かつ平成28年選挙当時の3.08倍という較差自体につき、違憲状態か否か明確に判断を示さなかった。
<判決>
●参議院議員選挙における投票価値の平等の保障について
憲法は、14条1項の定める法の下の平等の原則の政治の領域における適用として、成年者による普通選挙を保障するとともに、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって選挙人の資格を差別してはならないものとしている(憲法15条3項、44条)。
選挙権の平等の原則は、選挙権の内容の平等、換言すれば、議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等、すなわち投票価値の平等を要求している。
参議院の権能やこれまで果たしてきた役割、議員の選ばれ方など⇒参議院の選挙であるからといって、直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見出し難い。
●議員定数配分規定の違憲判断の基準
参議院議員選挙における定数配分規定の憲法適合性:
①当該定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡が、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っているか否か
②前記の状態に至っている場合に、当該選挙までの期間に当該不均衡の是正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超えるとして当該定数配分規定が憲法に違反するに至っているか否か
の観点から検討するのが相当。
●本件定数配分規定の違憲性の判断
◎投票価値の不平等状態
①本件選挙当時、議員1人当たりの登録有権者数の最大較差は3.00倍であり、これは最小の福井県選挙区の投票価値が最大の宮城県選挙区の投票価値の3倍⇒常識的に考えても許容し難い。
②平成29年衆議院議員選挙(小選挙区)の最大較差である1.979倍に大きく劣後
③社会の成熟に伴い国民の権利意識が強くなっている
⇒
違憲の問題が生じる程度の投票価値の著しい不平等状態にあったと認めるのが相当。
平成30年改正法は最大較差を3.08倍から3倍未満にするための弥縫策にすぎず、本件製鋸までに、抜本的な較差是正をという将来的な立法対応がされるという平成29年大法廷判決の前提が崩れ、較差是正が放置されたまま本件選挙を迎えている
⇒前記較差をもって違憲状態と判断することは、同判決に抵触するものではない。
◎相当な是正期間
①平成29年大法廷判決について、平成28年選挙当時、選挙区間における投票価値の不均衡についての違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に当たらない旨の判断が示されたが、同選挙当時の最大較差は3.08倍であった、
②その後、平成30年改正を実施した結果、本件選挙当時における最大格差は3.00倍であり、平成28年選挙当時の最大較差3.08倍よりは縮小
⇒
国会において、本件選挙までの間に違憲状態に至っていたことを認識し得たとまで認めるのは困難
⇒
本件選挙までの期間内に本件定数配分規定の改正がされなかったことをもって国会の裁量権の限界を超えるものとはいえない。
⇒
本件選挙における定数配分規定は、違憲状態ではあるが、憲法に違反するに至っていたということはできず、請求棄却。
~
今後における投票価値の格差の更なる是正に向けての方向性と立法府の決意が示されるとともに、再び上記のような大きな格差を生じさせることのないよう配慮されている。
・・・
⇒
平成28年選挙当時、平成27年改正後の定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず、同定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない。
平成28年選挙後の平成29年2月、参議院の組織及び運営に関する諸問題を調査検討するため、各会派代表による「参議院改革協議会」が設置、同年4月、同協議会の下に、「選挙制度に関する専門委員会」が設置。
⇒平成30年改正法が成立。
参議院選挙に係る定数配分規定の合憲性:
最高裁昭和58.4.27:
①当該配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡が違憲の問題を生ずる程度の著しい不平等状態(いわゆる違憲状態)に至っているか
②当該選挙までの期間内に当該不均衡の是正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超えるか否か
の各観点から検討するという基本的な判断枠組みを示した。
but
平成29年大法廷判決:
前記②の判断において考慮するのではなく、
前記①の判断において考慮し、
かつ平成28年選挙当時の3.08倍という較差自体につき、違憲状態か否か明確に判断を示さなかった。
<判決>
●参議院議員選挙における投票価値の平等の保障について
憲法は、14条1項の定める法の下の平等の原則の政治の領域における適用として、成年者による普通選挙を保障するとともに、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって選挙人の資格を差別してはならないものとしている(憲法15条3項、44条)。
選挙権の平等の原則は、選挙権の内容の平等、換言すれば、議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等、すなわち投票価値の平等を要求している。
参議院の権能やこれまで果たしてきた役割、議員の選ばれ方など⇒参議院の選挙であるからといって、直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見出し難い。
●議員定数配分規定の違憲判断の基準
参議院議員選挙における定数配分規定の憲法適合性:
①当該定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡が、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っているか否か
②前記の状態に至っている場合に、当該選挙までの期間に当該不均衡の是正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超えるとして当該定数配分規定が憲法に違反するに至っているか否か
の観点から検討するのが相当。
●本件定数配分規定の違憲性の判断
◎投票価値の不平等状態
①本件選挙当時、議員1人当たりの登録有権者数の最大較差は3.00倍であり、これは最小の福井県選挙区の投票価値が最大の宮城県選挙区の投票価値の3倍⇒常識的に考えても許容し難い。
②平成29年衆議院議員選挙(小選挙区)の最大較差である1.979倍に大きく劣後
③社会の成熟に伴い国民の権利意識が強くなっている
⇒
違憲の問題が生じる程度の投票価値の著しい不平等状態にあったと認めるのが相当。
平成30年改正法は最大較差を3.08倍から3倍未満にするための弥縫策にすぎず、本件製鋸までに、抜本的な較差是正をという将来的な立法対応がされるという平成29年大法廷判決の前提が崩れ、較差是正が放置されたまま本件選挙を迎えている
⇒前記較差をもって違憲状態と判断することは、同判決に抵触するものではない。
◎相当な是正期間
①平成29年大法廷判決について、平成28年選挙当時、選挙区間における投票価値の不均衡についての違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に当たらない旨の判断が示されたが、同選挙当時の最大較差は3.08倍であった、
②その後、平成30年改正を実施した結果、本件選挙当時における最大格差は3.00倍であり、平成28年選挙当時の最大較差3.08倍よりは縮小
⇒
国会において、本件選挙までの間に違憲状態に至っていたことを認識し得たとまで認めるのは困難
⇒
本件選挙までの期間内に本件定数配分規定の改正がされなかったことをもって国会の裁量権の限界を超えるものとはいえない。
⇒
本件選挙における定数配分規定は、違憲状態ではあるが、憲法に違反するに至っていたということはできず、請求棄却。
判例時報2437
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