« 契約期間の満了による有期労働契約終了について判断しなかったことが違法とされた事例 | トップページ | 付審判決定により原審裁判所の審判に付された、私服警察官による特別公務員暴行陵虐致傷事件 »

2020年5月12日 (火)

就業規則と異なる労働条件である出来高払制の合意をしたとの主張(否定)

福岡高裁H31.3.26    
 
<事案>
Y1会社に雇用されて長距離トラック運転手として稼働していたXが、
①Y1会社に対し、雇用契約に基づき、未払賃金(割増賃金等)の支払を求め
②Y1会社の代表取締役であるY2及びY2の夫であり事実上の取締役とされるY3に対し、Y1会社が未払賃金を支払わないことについて、会社法429条1項又は民法709条に基づき、損害賠償の支払を求め
③Y3及びY1会社に対し、Y3がXに対しパワーハラスメントを行っていたとして、Y3につき民法709条に基づき、Y1会社につき会社法350条(類推適用)に基づき、損害賠償の支払いを求めた

④Y1会社が、Xに対し、Xが業務指示を受けていた運送業務を無断で放棄したとして、不法行為又は債務不履行に基づき、損害賠償の支払を求めた(反訴)

Y1会社は、当初は土木工事業のみを営み、これを前提に就業規則⇒後に長距離トラック運送業も営むよううになったが、就業規則を改正しないまま、
土木工事業の従業員には、本件就業規則に定められた日給月給制で賃金を支払い、
Xを含む長距離トラック運転手には短答路線ごとの路線単価に従った出来高払制で賃金を支払っていた。
 
<原審>
①について、日給月給制を定める本件就業規則は文言上長距離トラック運転手に不利益をもたらすものではない⇒労契法7条により、Xにも本件就業規則の日給月給制の定めが適用され、仮に出来高払制の合意があったとしても同法12条の規定する最低基準効に反し無効⇒割増賃金等を含む未払請求には理由がある。
②について、「重大な過失」「過失」なし⇒否定。
③について、(Y3がXを丸刈りにするなどした上、これらの事実について写真とともにY1会社のブログに掲載)はパワハラに該当し、Y3は民法709条の不法行為を追い、Y1会社は会社法350条(類推適用)の責任を追う。
④については、Xの不法行為責任を一部認めた。
  
Y1、Y3の控訴審での追加主張:
XとY1会社は、労働契約締結時、出来高払制の合意をしたものであるところ、
労契法12条の「就業規則で定める基準に達しない労働条件」に該当するか否かは、現に就業規則が適用される従業員の待遇と個別の合意により定めた労働条件・待遇とを比較すべき。 
 
<判断>
Xの賃金が、賃金台帳、給与明細一覧表及び給与明細書で「基本給(日給)」名目とされ、給与明細別紙には「本日給料」、Y1会社の求人広告には「日給12、500円~28,000円」としていずれも日給であることが記載されている⇒出来高払制の合意があったとは認め難い
②深夜の時間帯を中心として長距離運送業務に従事するXの勤務形態⇒出来高払い制が本件就業規則等よりもXに有利であるとは認められない
仮に出来高払制の合意があったとしても、就業規則の最低基準効に反して無効

原審同様、本件就業規則が適用される。
判例時報2435

|

« 契約期間の満了による有期労働契約終了について判断しなかったことが違法とされた事例 | トップページ | 付審判決定により原審裁判所の審判に付された、私服警察官による特別公務員暴行陵虐致傷事件 »

判例」カテゴリの記事

労働」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 契約期間の満了による有期労働契約終了について判断しなかったことが違法とされた事例 | トップページ | 付審判決定により原審裁判所の審判に付された、私服警察官による特別公務員暴行陵虐致傷事件 »