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2020年4月21日 (火)

農業協同組合の行為が不公正な取引方法に該当するとされた事案

東京地裁H31.3.28  
<事案>
公正取引委員会(Y)がA農業協同組合に対し、不公正な取引方法に該当する行為があり、独禁法19条に違反⇒同法20条2項に基づいて排除措置命令⇒Aが本件命令の取消しを求めて訴えを提起。
訴え提起後、X農業協同組合がAを吸収合併し、訴訟承継。 
 
<事実>
Aは、かねてからなすの販売を受託することができる組合員を集出荷場ごとに組織されている支部園芸部の支部員等に限定。
遅くとも平成24年4月以降、平成28年10月31日までの間に、支部園芸部から除名又は出荷停止の処分を受けるなどした者からなすの販売を受託せず、あるいは
支部員が集出荷場を利用することなく他の青果卸売業者(Aの管内及びその周辺地域に3社存在する)に販売委託した場合(「系統外出荷」)
支部園芸部が定めた系列外出荷手数料等を収受し、さらに、
支部員のBへのなすの出荷重量が一定水準を下回った場合には、支部園芸部が定めた罰金等をそれぞれ収受して、
これらを自らの農産物販売事業に係る経費に充て、なすの販売を受託。

組合蔭の事業活動を不当に拘束する条件を付けて組合員と取引していたものであって、一般して12項に該当し、独禁法19条に違反する行為

Yは、Aに対して、
本件行為を行っていない旨を確認すること
今後組合員からのなすの販売の受託に関し本件行為と同様の行為を行わないことをAの理事会において決議すること、
同決議に基づいてとった措置を組合員に通知すること
等を内容とする本件命令をした。
 
<規定>
独禁法 第一九条[不公正な取引方法の禁止]
事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。

独禁法  第二条[定義]
⑨この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
六 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの
ニ 相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。

一般指定
(拘束条件付取引)
12法第二条第九項第四号又は前項に該当する行為のほか、相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること
 
<主たる争点>
一般指定12項の定める要件のうち
①Aの「相手方」が組合員であるといえるか(支部園芸部ではないのか)
②Aが組合員の事業活動を「拘束する条件をつけて」組合員と取引していたか
③本件行為が「不当に」拘束する条件を付けた取引に当たるか
 
<判断>  
●争点①
一般指定12項にいう「相手方」とは取引の相手方を意味し、
取引の相手方が誰かはその取引の実態に即して判断すべき

①販売受託の実施に必要な人的物的資源や費用の提供は、いずれも農業者又はAないしその職員が行っており、支部園芸部ないしその職員は介在していない
②なすの販売委託についてAが組合員から販売品の販売委託を受ける旨定めた販売業務規定の適用があったと推認できる
③Aは県に対して、平成23年度から平成26年度までの間の販売事業の員外利用高を0円と報告し、平成27年度の組合員利用高について販売事業取扱高の99%に当たる金額を報告していることなどの、なすの販売受託の実態等

Aは組合員たる農業者からなすの販売を受託していたと認めることができ、Aにとって組合員は「相手方」に該当する。
 
●争点②
最高裁判決を引用し、
一般指定12項にいう拘束があるというためには、必ずしもその取引条件に従うことが契約上の義務として定められていることを要せず、それに従わない場合に何らかの不利益を伴うことにより現実にその実効性が確保されていれば足りる

①Aはなすの販売を受託する組合員を、集出荷場を利用することができる支部員等に限定しており、支部園芸部から除名又は出荷停止等の処分を受けるなどした者からなすの販売を受託しないこととしていた
②一部の支部においては系統外出荷手数料や罰金を徴収し、これらをAの経費に充てていた
③これらは、なすがAの集出荷場に出荷されAが販売を受託しBに販売委託する取引の割合(系統出荷率)を可及的に増加させることを目的としたものであるといえる

Aは、なすの販売を委託しようとする組合員(農業者)をして、系統外出荷を理由に除名されるなどした者から委託を受けないとうい条件、系統外出荷を行った場合に系統外出荷手数料及び罰金を収受するという条件を付して、なすの販売受託をしていた⇒Aが組合員の事業活動を「拘束する条件をつけて」組合員と取引していた。
 
●争点③ 
最高裁判例を示しつつ、拘束の形態や程度等に応じて公正な競争を阻害するおそれ(独禁法2条9項6号柱書参照)を判断し、それが公正な競争秩序に悪影響を及ぼすおそれがあると認められる場合に初めて相手方の事業活動を「不当に」拘束する条件を付けた取引に当たる

市場における有力な事業者が、取引先事業者に対し、自己の競争者と取引しないよう拘束する条件を付して取引する行為や、
自己の商品と競争関係にある商品の取扱いを制限するよう拘束する条件を付けて取引する行為を行うことにより、市場閉鎖効果が生じる場合には、
公正な競争を阻害するおそれがある。

市場閉鎖効果が生じるか否かの判断に当たっては、具体的行為や取引の対象、地域、態様等に応じて、当該行為に係る取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討した上で、ブランド間及びブランド内競争の状況、垂直的制限行為を行う事業者の市場における地位、当該行為の対象となる取引先事業者の事業活動に及ぼす影響、当該取引先事業者の数および市場における地位を総合的に考慮して判断すべき。

本件行為によって市場閉鎖効果が生じるかを検討する際には、
Aの管内及びその周辺地域におけるなすの販売受託における市場閉鎖効果につき検討することが相当。

①Aはその管内及びその周辺地域における那須販売受託の取引市場において特に有力な事業者であるといえる。
②A管内及びその周辺地域のなす販売受託の取引市場において本件行為の対象となっている農業者が占める割合が大きいといえる⇒集荷するなすの大部分をA管内からの集荷に依存していた他の青果卸売業者が、本件行為の拘束を受ける農業者の生産するなすの収穫量に代わる十分な量のなすを集荷し、取引機会を得ることは困難。
③本件行為に係る条件は農業者が本来自由に決定すべき取引先の選択を制約するものであったというべきであること等。

Aの本件行為によって、集荷するなすのほとんどをA管内から集荷している業者にとっては、取引機会が減少するような状態がもたらされるおそれが生じた(市場閉鎖効果が生じた)
 
<解説>
本件は、独禁法で禁止される不公正な取引方法(独禁法2条9項、19条) のうち「(その他の)拘束条件付取引」(独禁法2条9項6号ニ、一般指定12項)への該当性が問題となった事案について、
一般指定12項における「相手方」、「拘束する条件をつけて」及び「不当に」の解釈について、従来の判例通説及び「流通・取引慣行に関sるう独占禁止法上の指針」に示された考え方に依りつつ、本件行為に係る具体的事実に即して判断し、本件行為が一般指定12項に該当することを認めた事例。
判例時報2433

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