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2020年3月15日 (日)

営利の目的、麻薬取締官への捜査協力の評価

東京高裁H30.10.18      
<原判決>
被告人について、覚せい剤営利目的輸入及び関税法違反3件並びに覚せい剤営利目的所持1件の成立を認めた。 
 
<主張>
麻薬取締官に対して捜査協力を行い、その見返りとして被告人が関係する覚せい剤の取引の検挙を見逃してもらうなどの関係を築いてきた。
栃木事件について、金銭的メリットがないことを理解した上で、荷受人を麻薬取締り間に検挙させるなどの目的で加担⇒営利の目的を有さず、共同正犯性もない。
量刑主張。
 
<判断>
●栃木事件について:
麻薬取締官の顔を立て、その要求に応えて共犯者からの加担依頼を引き受けておくことで、その後も継続的に麻薬取締官の監視下で覚せい剤の密売を行って利益を得る目的を有していたと推認することができ、被告人にはこの意味における営利の目的があった⇒共同正犯を肯定。
 
●量刑について 
麻薬取締官が被告人に対して求めた捜査協力は、その適法性や相当性に大きな疑問が存するものであることを前提に、
自己保身や密輸等による利益のためという協力の動機

捜査協力の事実を被告人に有利に考慮する余地はない

麻薬取締官からの被告人に対する助長は、被告人からすれば麻薬取締官から保護の言質を採るやり取りであり、
このように自己保身を図りながら覚せい剤輸入の各犯行への加担を決めた意思決定は狡猾で、
麻薬取締官の助長の存在により、非難の程度が原判決の量刑を左右するほど減弱するとはいえないし、被告人の罪の意識が減じていたとも認められない
 
<解説>
覚せい剤法における「営利の目的」:
犯人がみずから財産上の利益を得、又は第三者に得させることを動機・目的とする場合をいうと解すべき(判例)

自利目的について、それが認められるのは、当該犯罪行為を手段として直接に利得しようとする動機・目的がある場合に限られない
判例時報2429

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