東京都議会議員についての、特例選挙区の存置の適法性、議員定数配分規定の適法性等
最高裁H31.2.5
<事案>
東京都義委会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例に基づいて平成29年7月2日に施行された東京都議会議員一般選挙について、江東区選挙区の選挙人である上告人が、
①本件条例が・・・・の区域を併せて1選挙区(島部選挙区)として存置したこと(2条3項)は、特例選挙区について定める公選法271条に、
➁本件条例のうち、各選挙区において選挙する議員の数を定める3条が公選法15条8項に、それぞれ違反するとともに、同法271条及び本件条例の定数配分規定が憲法14条1項等に違反して無効
⇒
被上告人東京都選挙管理委員会を相手に、本件選挙の江東区選挙区における選挙を無効とすることを求めて提起した選挙訴訟。
<判断・解説>
●島部選挙区を特例選挙区として存置することの適法性
<事案>
東京都義委会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例に基づいて平成29年7月2日に施行された東京都議会議員一般選挙について、江東区選挙区の選挙人である上告人が、
①本件条例が・・・・の区域を併せて1選挙区(島部選挙区)として存置したこと(2条3項)は、特例選挙区について定める公選法271条に、
➁本件条例のうち、各選挙区において選挙する議員の数を定める3条が公選法15条8項に、それぞれ違反するとともに、同法271条及び本件条例の定数配分規定が憲法14条1項等に違反して無効
⇒
被上告人東京都選挙管理委員会を相手に、本件選挙の江東区選挙区における選挙を無効とすることを求めて提起した選挙訴訟。
<判断・解説>
●島部選挙区を特例選挙区として存置することの適法性
最高裁の特例選挙区を存知する規定の適法性判断の枠組み(最高裁H1.12.18):
(1)
具体的にいかなる場合に特例選挙区の設置が認められるかについて、
当該都道府県の行政施策の遂行上当該地域からの代表を確保する必要性の有無・程度、
隣接の都市(現在は市町村)との合区の困難性の有無・程度等
を総合判断して決することにならざるを得ないところ、
それには当該都道府県の実情を考慮し、当該都道府県全体の調和ある発展を図るなどの観点からする政策的判断をも必要とすることが明らか
⇒
特例選挙区の設置を適法なものとして是認しうるか否かは、この点に関する都道府県議会の判断が前記のような観点からする裁量権の合理的な行使として是認されるかどうかによって決するよりほかない。
(2)
公選法271条は、配当基数が0.5を著しく下回る場合には、特例選挙区の設置を認めない趣旨であると解される
⇒
このような場合には、特例選挙区の設置についての都道府県議会の判断は、合理的裁量の限界を超えているものと推定するのが相当。
⇒
このような場合には、特例選挙区の設置についての都道府県議会の判断は、合理的裁量の限界を超えているものと推定するのが相当。
判断:
島部選挙区は、本件条例制定当時から特例選挙区として存置されていたのは、
①島しょ部が・・・特有の行政需要を有する⇒東京都の行政施策の遂行上、島しょ部から選出される代表を確保する必要性が高いものと認められる一方
➁その地理的状況⇒他の市町村の区域との合区が、地続きの場合に比して相当に困難
であることが考慮。
東京都議会は・・・存置することを決定したものと推認することができる。
⇒
本件選挙当時の島部選挙区の配当基数は、東京都議会において同選挙区を特例選挙区として存置したことが社会通念上著しく不合理であることが明らかであると認めるべき事情もうかがわれない。
●本件定数配分規定の適法性について
最高裁判例は、条例の定数配分規定の公選法15条8項適合性の審査方法につき、
都道府県議会の議員定数の配分において同項ただし書を適用して人口比例の原則に修正を加えるかどうか及びどの程度の修正を加えるかについては、当該都道府県議会にその決定に係る裁量権が与えられており、
条例の定める定数配分が同項の規定に適合するかどうかについては、都道府県議会の具体的に定めるところが、裁量権の合理的な行使として是認されるかどうかによって決せられるべきもの。
具体的に決定された定数配分の下における選挙人の投票価値に較差が生じている場合において、その較差が都道府県議会において地域間の均衡を図るため通常考慮し得る諸般の要素を斟酌してもなお一般的に合理性を有するものとは考えられない程度に達しており、これを正当化すべき特段の理由が示されないときは、裁量権の合理的な行使とはいえない
との判断枠組み。
そして、投票価値の較差が「一般的に合理性を有するものとは考えられない程度に達している」というべきか否かを判断するに当たっては、選挙区の人口と配分された定数との比率の最大較差、人口比定数と現実の定数の隔たりの程度等が考慮要素とされている。
都道府県議会の定数配分につき、公選法15条8項ただし書を適用して人口比例の原則に修正を加える場合⇒その文理に照らして同項ただし書に定める「特別の事情」を要するものと解される。
最高裁H27.12.5:
選挙人の投票価値の較差が一般的に合理性を有するものとは考えられない程度に達していないが、公選法15条8項ただし書を適用してされた条例の制定時若しくは改正時において、同項ただし書にいう特別の事情があるとの評価が合理性を欠いており、又はその後の選挙時において前記の特別の事情があるとの評価の合理性を基礎付ける事情が失われたときは、当該定数配分は、裁量権の合理的な行使とはいえないものと判断されざるを得ないと判示。
最高裁H27.12.5:
選挙人の投票価値の較差が一般的に合理性を有するものとは考えられない程度に達していないが、公選法15条8項ただし書を適用してされた条例の制定時若しくは改正時において、同項ただし書にいう特別の事情があるとの評価が合理性を欠いており、又はその後の選挙時において前記の特別の事情があるとの評価の合理性を基礎付ける事情が失われたときは、当該定数配分は、裁量権の合理的な行使とはいえないものと判断されざるを得ないと判示。
本判決:
①特例選挙区を除く選挙区間の議員1人当たりの人口の最大格差は1対2.48であり、人口比定数による選挙区間の議員1人当たり人口の最大格差と差異がない
➁特例選挙区以外の選挙区間の最大格差は前回の選挙時より拡大しているものの、これは千代田区選挙区が特例選挙区でなくなったことによるものであり、千代田区選挙区と他の選挙区との間の最大格差は前回の選挙時より縮小していた。
⇒
本件選挙時における本件定数配分規定は適法。
●憲法適合性
特例選挙区の存置及び定数配分に関する本件条例の憲法適合性については、それぞれ公選法適合性の判断にあたって検討すべき事項と重なる
⇒その判断を引用した上で、憲法14条1項等の規定に違反していたものとはいえない。
⇒その判断を引用した上で、憲法14条1項等の規定に違反していたものとはいえない。
判例時報2430
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